Quintessence DENTAL Implantology 2024年No.4
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第3回軟組織マネジメントに配慮した即時埋入Soft Tissue Management 前回は、リッジプリザベーションには硬組織を守ることによる間接的な軟組織マネジメントへのプラスの効果だけでなく、その手法や使用材料を選ぶことで直接的な軟組織マネジメントへのプラスの効果もあることを解説した。今回は、低侵襲・短期間という大きなメリットのある即時埋入が軟組織マネジメントにおいてどのような効果があるかを深掘りしていく。 抜歯直後にインプラントを即時に埋め込む即時埋入は、外科手術回数の減少や治療期間の短縮だけでなく組織保存という目的で導入された治療法である1。しかしながら、インプラントを抜歯窩に即時に埋め込むこと自体に組織保存の効果はないことが今ではわかっている2。 当初は抜歯窩のサイズに近いインプラントを即時に埋入することが組織温存に効果があると考えられていたが、さまざまな動物実験をとおして、抜歯窩よりも小さなサイズのインプラントを用いてギャップを作ること3、インプラントは舌側寄りに配置することで頬側のギャップを大きくすること4が頬側骨の高さを保存するためには効果的で、さらにそのギャップに骨補填材を充填することが組織温存につながり、それはボリューム維持だけでなく骨補填材の隙間には新生骨が形成されオッセオインテグレーションも起きる5ということが示され、現在に至っている。 抜歯窩にインプラントを即時埋入しただけであったとしても、インプラントと既存骨の間には新生骨が形成されオッセオインテグレーションが得られることはヒトの組織切片からもわかっている6が、組織温存や軟組織マネジメントという観点からは前回述べたリッジプリザベーションと同様の手法(可能であればフラップレスで抜歯窩には骨補填材を充填し、ソケットシールをしたうえで、Hidden X sutureによるオープンヒーリングを行う)を用いて、その際に同時にインプラントを埋入し1回法の対応をすることもできれば、組織温存が可能なだけでなく治療期間短縮や手術回数の減少もでき、さらに二次手術も不要になるため即時埋入は患者、術者双方にとって非常に有効な手法といえる(図1)。 Clementiniらによる無作為化比較対象研究においてもDBBMとコラーゲンマトリックスによるリッジプリザベーションを行ったグループと、インプラントを即時に埋入し、ギャップにDBBMを充填し、コラーゲンマトリックスでシールした群を比較すると4ヵ月後の組織温存効果は硬組織だけでなく、軟組織に関しても同等だということが示されている7、8。ただし、即時埋入をどれだけ積極的に行うのかは術者によって大きな差があり、即時埋入を好む先生はほとんどを即時埋入で対応し、即時埋入を怖がる先生は即時埋入を一切行わない傾向があると筆者は感じている。これは1990年114Quintessence DENTAL Implantology─ 0634AdvanceAdvanceはじめに非審美領域の即時埋入増田英人 Hideto Masuda大阪府開業:ますだ歯科医院令和版 軟組織のトリセツ

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