福岡県開業:ばば歯科クリニック92Quintessence DENTAL Implantology─ 0800 インプラント治療は、術式の進歩とマテリアルの開発によって選択肢が増え、より多くの欠損補綴症例に対応できるようになってきている。当院においてその治療結果に対して患者満足が得られるのは、最終上部構造装着後10年以上経過し問題なく機能している場合が多いと感じるが、長期にわたってインプラントを維持・機能させ、同時に患者の満足も得るというのは難しい場合もある。インプラント治療の術式と同様にメインテナンスにも種々の工夫や対応が必要である。 今回、骨造成を行った症例と、インプラントオーバーデンチャー(IOD)症例のアプローチのまったく異なる2症例について、長期に良好な経過を確認できたため報告し、考察する。症例の概要 患者は2003年8月初診時57歳の女性。₇₆欠損による咀嚼障害にて来院した(図1)。全身的健康状態は良好で特記すべき事項はない。初診時から治療に対して積極的であり、自宅は当院に近く、通院しやすい環境であった。₇₆欠損部について可撤性義歯とインプラント治療の利点・欠点を説明したところ、患者はインプラント治療を希望した。治療経過 ₇₆は保存不可能のため抜歯し、全顎的な歯周基本治療を行った。2004年1〜3月、543234564567にエムドゲインを用いて歯周組織再生療法を行った。同年4月、₇₆部に多血小板血漿(PRP)を用いた骨再生誘導法(GBR)を行い(図2)、同10月、₇₆部の下顎管上縁までの距離は13mmであったため、₆部に直径3.7mm×長径10mm、₇部に直径4.2mm×長径10mmのPOIインプラント(京セラ社)を埋入した。2005年4月、₇₆部に最終上部構造をセメント仮着し、上顎はパーシャルデンチャーを装着し治療を終了した(図3)。 その後、経過観察にて良好な状態を維持していたが、2008年1月に患者が右側上顎へのインプラント治療を希望したため、インプラント治療計画を立案した。CTを撮影したところ隔壁が存在したため(図4)、歯槽頂アプローチによる上顎はじめに症例1:右側上下顎臼歯部インプラント治療後約13年経過症例長期インプラント症例を再評価する馬場正英 Masahide Babaインプラント治療の長期予後の向上に関する考察
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