Quintessence DENTAL Implantology 2024年No.5
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第5回呼吸器疾患編高血圧狭心症病尿糖 これまでの連載では、循環器疾患患者さんにインプラント手術を行う場合の注意点についてお話ししてきました。今回は呼吸器疾患の中でも遭遇することが多い、喘息とCOPD(慢性閉塞性肺疾患)、睡眠時無呼吸症候群に関する注意点をお話しいたします。これらの疾患は病態がそれぞれ異なるため、インプラント手術を行ううえでの注意点にも少々違いがあります。そこで、疾患ごとにその特徴と注意点について解説していきます。ら発症する喘息は非アトピー型が大部分を占め、重症化することも稀ではないようです(後述)。 近年では、発作のないときに服薬して炎症を継続的に抑える「コントローラー」と、発作時に用いて重篤化を防ぎ早期に発作を寛解させる「リリーバー」の2タイプの薬剤が治療に用いられるようになりました(表1)。Basic喘息とインプラント手術 第一に、喘息患者さんの気管を刺激してはならないことを覚えておきましょう。われわれは刺激臭のある薬剤(ユージノールやレジンポリマーなど)を使用することが多いわけですが、これらを喘息患者さんに吸入させてはなりません。同様の理由で切削片にも注意が必要です。ですから口腔内外のバキュームを十分に活用すべきです。 また、喘息患者さんの中にはアレルギー体質の方が一定数いるということも頭の片隅に置いておきましょう。診療前に薬剤アレルギーやラテックスアレルギーの有無を確認する必要があります。ちなみに、フルーツアレルギーはラテックスアレルギーをともなうこともあるので(ラテックス‐フルーツ症候群;表2)、果物のアレルギーがあるかも確認しておきます(レストランみたいですね)。ラテックスアレルギーが疑われる場合は、パウダーフリーの手袋よりも、いっそのことラテックスフリーの手袋を使用しましょう。 酸素飽和度(SpO2)は、発作のないときには異常値を示しませんが、発作時には重症度の目安になるので、インプランBasic114Quintessence DENTAL Implantology─ 0822喘息の病態・原因と治療方法 喘息とは、激しく咳き込み呼吸困難となる発作を生じる疾患で、特に息が吐きにくくなることが特徴です。慢性の炎症によって過敏となった気管粘膜がウイルスやハウスダスト、気温の変化、薬物、タバコの煙などの刺激によって収縮することが原因です。発作が起こらなければ症状はほとんどみられませんが、気管粘膜の炎症はつねに存在しており、放置すれば徐々に粘膜が肥厚して発作を起こしやすくなります。 炎症にアレルギーが関与している「アトピー型」と関与しない「非アトピー型」に分けられますが、小児期に発症して成長とともに軽快することの多いアトピー型に対し、成人してかはじめに喘息砂田勝久 Katsuhisa Sunada日本歯科大学 生命歯学部 歯科麻酔学講座こんな患者が来院したら─有病者のインプラント手術における全身管理─

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