QDT1月
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日本で、歯冠修復材料としてのジルコニアが日常臨床において使用されるようになって約10年になる。オールセラミック材料において、機械的強さという点ではジルコニアの優位性に疑問の余地はないであろう。また、その審美性に関し、以前はその不透明性が議論を呼んだことも事実であるが、最近では透明性を大きく改良したものが市販されており、審美的にも優位性をもつマテリアルとして確立されたといっても過言ではない。結果、この透明性を生かして、ジルコニア本体を表面に(咬合面・前歯唇側)露出させる、いわゆる「フルジルコニア」が臨床に多く普及しつつある。これにともない、対合歯への影響が議論の対象になる破折のない臼歯部歯冠色修復を求めて 歯科医師・歯科技工士にとって、歯冠色材料による臼歯部補綴は破折との闘いといっても過言ではない。破折をなくすためには、正しい咬合接触を与え、力学的に有利なフレーム形態を付与し、築盛するマテリアルを適切にコントロールし、患者にナイトガードの使用を促すなどして対応をすることになる(図1、2)。 それでもやはり破折を完全になくすことは難しく(図3)、それを再製することによるストレスは、おおいに術者を苦しめることとなる。 こうした中、臼歯部の歯冠色修復物の破折に対し、術者にとって福音となるマテリアルがフルジルコニアといえるだろう。やはり術者にとって「壊れにくい」ということは大きなアドバンテージであり、安心感をもって補綴物を製作することができるであろう(図4)。ようになった。 そこで本稿では、フルジルコニアクラウンに対合する、対合歯への影響に関して研磨の重要性を提示し、「チェアサイドでの研磨」に焦点を絞って解説したいと思う。また、クラウンをチェアサイドにデリバリーする前に、いかに咬合調整のないクラウンを製作できるかも重要であり、そのための方法をCAD/CAMでのデザインを中心に解説したいと思う。さらに、インプラント上部構造としてのフルジルコニアクラウンや、最近の高透明度ジルコニアから、さらに透明度を増した最新材料である「スーパーハイトランスジルコニア」の紹介をしたいと思う。1.フルジルコニアクラウンの有用性はじめに■臼歯部歯冠色修復物の破折防止対策図1 適切な咬合接触点を与えることにより、陶材の破折の軽減につながる。図2 デンチャーワークとのコンビネーションの際には、とくに力学的に考慮したフレーム形態が必要である。
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