QDT2月
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107第5回:周囲組織に配慮した大臼歯部のインプラント上部構造形態について図2 インプラント周囲炎のリスク因子の重み付け(元図は参考文献2。本図は参考文献3より引用)。図3a、b 筆者が以前製作していた歯肉縁下マージンのアバットメント(a)と、現在製作している歯肉縁(上)マージンのアバットメント(b)。歯肉縁(上)マージンにしてクラウンカントゥアをストレートにすることにより、セメントが除去しやすくなり、清掃性も向上する。 だが、口腔内は過酷な状況下にあり、さまざまな要因から「インプラント周囲炎」に罹患してしまう患者もいる。そのインプラント周囲炎のリスクファクターとしては図2などが挙げられる。この中で、われわれ歯科技工士が関与できるのは、図2でも重視されている口腔内清掃についてであり、清掃性の高い補綴物製作は、インプラント周囲炎の予防に大きな影響を与えると思われる。われわれ歯科技工士は1ピースタイプ/2ピースタイプ、どちらのインプラント上部構造も扱う可能性があるため、インプラント周囲炎を防ぐためにも、それらの特性を熟知し、対応しなくてはならないと考える。 2ピースタイプインプラントとカスタムアバットメントを使用して、大臼歯部の上部構造を製作する際、一定の審美性を考慮して歯肉縁下にマージンを設定し、上部構造にてカントゥアを付与している方が多いのではないだろうか。以前、筆者が製作していたアバットメントの形態も、インプラントプラットフォームからの立ち上がりをほぼ直角にし、そこからトランジショナルエリアはなるべくストレートにして、歯肉縁下に設定したマージン付近で押し広げるような形態を付与していた(図3a)。しかし、これでは長期的な安定を考慮したとき、マージンの設定位置に疑問を感じるようになった。 そのため、現在筆者が製作しているアバットメントでは、インプラントプラットフォームからの角度などはそのままに、マージンを歯肉縁(上)に設定している(図3b、4)。そこから、頬舌側のクラウンカントゥアはストレートに立ち上がるようにしている。マージンが歯肉縁(上)になることで、セメント除去が容易になり、清掃性が向上する。また、隣接面コンタクトエリアの下部鼓形空隙は歯冠ブラシが通るように形態を付与している(図5)。 大臼歯部は清掃しにくい部分であるため、このような対応によって周囲組織の維持・安定を図る。清掃性を考慮した大臼歯部インプラント上部構造の形態 〔2ピースタイプ〕マージンから上部構造はストレートに立ち上げるマージンから上部構造で立ち上げる①粗末な口腔内清掃状態エビデンスのあるリスク因子②喫煙③歯周疾患の既往④糖尿病相関があるがエビデンスの限定的なリスク因子議論の余地がありエビデンスが限定的なリスク因子⑤アルコール摂取⑥遺伝形質⑦インプラント表面性状abQDT Vol.40/2015 February page0257
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