QDT2015年3月
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38Feature article ♯138蒲池久美子 Kumiko Kamachi歯科医師(補綴専門医)・S&K Dental Speciality Group(米国マサチューセッツ州、補綴専門歯科医院開業)、Former Clinical Associate Professor, Dept. of Restorative Sciences and Biomaterials, Boston University Henry M. Goldman School of Dental Medicine258 West Newton Street, Suite 1Boston, MA 02116, USAフルジルコニアは万能か?―米国事情と論文にみるフルジルコニアの今―序:米国におけるフルジルコニアクラウンの普及度やそのコストについて 歯科補綴における材料やテクニックはこの10年の間で目覚ましい発展を遂げている。中でもクラウン・ブリッジ、インプラント補綴に関しては、CAD/CAMによる補綴物製作の普及、最新のオールセラミック・メタルフリー補綴物としてのジルコニアや二ケイ酸リチウム、ハイブリッドセラミックの登場と、その材料の性質・操作性、審美性の向上速度は目覚ましく、臨床医にはついていくのが困難なほどである。 歯科陶材はおよそ100年の歴史をもち、陶材焼付鋳造冠(以下、メタルセラミックス)の登場は補綴治療に大きな発展をもたらした。メタルセラミックスは、審美性や適合、機能性に優れ、単冠からブリッジまで適用範囲が広く、固定性補綴における補綴物の大半を占めてきた。しかし、金属製のフレームワークが陶材の光透過を阻み、補綴物の審美性を天然歯のそれに近づけることは技術的に非常に難しかった。さらに、歯肉退縮によって歯頚部にマージンが露出した場合、金属色が露出してとくに審美性を低下させる、などが問題であった。 オールセラミックの補綴材料は、1950年代からさまざまに開発が進められてきていたが、メタルセラミックスに匹敵する強度と機能性をもちあわせた臨床に適応する材料はなかなか開発されるに至らなかった。しかし、ここ10年の間に登場したジルコニアや二ケイ酸リチウムはCAD/CAMによる加工法の確立とともに、審美性、強度、適合、操作性の非常に高い臨床に適した素材として認知されてきたことは、文献や臨床のトレンドをみると明らかである1。 米国では近年、全米の歯科技工所の半数がミリングによQDT Vol.40/2015 March page0330
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