QDT2015年3月
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歯科技工士ライセンスを取得し、早いもので来年30年という節目を迎えようとしている。辛い研鑚期を乗り越えた先の、歯科技工士としてのやりがいや充実感はどこにあるのだろうか? いつもそれを求めながら、誇りのもてる働き方をしたいと願い、今日までこの職業に取り組んできた。その経験から歯科技工士としての本来の立ち位置を考えるようになり、結果を出すために避けては通れない大切なものが見えてきた。 各種講演会やセミナーで習得した技術をより高いものにしようと臨床に取り組み、研鑽することは必要不可欠であるが、それと同等かもしくはそれ以上に歯科医師とのコミュニケーションは重要と考える。歯科医師の診査・診断、治療計画に従い、歯科技工士が治療の早い段階から参画することは、症例のリスクや治療途中の再評価の情報を共有することができるため、同じゴールを見据えるチーム医療の一員として強く求められてきている。その結果製作された技工物は、より高い次元で関係者の満足を得ることができると考える。 強固で適合の良い審美的セラミッククラウンは、良好な印象と的確にリダクションされた支台歯形成があってはじめて製作可能になることは周知の通りであるが、日常臨床においてはその環境が確立できず、何かを得るために何かを諦めるような技工が多く見受けられる。良いものをつくりたい。そんな素直な気持ちを形にするため、歯科技工士自らが手を挙げ、自分自身の技術力を発揮できる技工環境を求め、少しでも平均点の高い技工物を製作できるよう歯科医師に理解を求めていく姿勢が、今、求められているように思う。 今回は筆者の日々の臨床の中から、技工物の平均点をアップさせるための重要な第一歩となる、もっとも基本的で、もっとも重要と考える要因について、適合・機能・清掃性・形態・色調の5項目それぞれに対して挙げてみたい。南沢英樹Dental Lab SCALA愛知県名古屋市中川区十番町4‐9 アソシエビル5F技工物の平均点を上げる―技工物を補綴物に変えるための始めの一歩―Feature article #2
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