QDT2015年3月
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117第6回:ジルコニアの基本的な物性と特徴 2011年のIADRにおいて、Basunbulら1は、研磨したジルコニア(Wieland)、研磨した前装用長石系陶材(Ceramco3、Dentsply)、研磨した長石系CAD/CAM用ブロック(MarkⅡ、Vita Zahnfabrik)で、新鮮抜去歯を水中で往復摩耗(400g、移動距離6mm、6万回および60万回)した後、エナメル質の高さの変化をデジタルマイクロメーターで測定した結果、鏡面研磨したジルコニアと対合するエナメル質摩耗減量がもっとも少なかったと報告している(図2)。 また、Seghiら2はエナメル質の摩耗は、セラミック製修復物の固さに影響されるのではなく、その微細構造に大きく影響され、表面の鏡面研磨の程度に、対合するエナメル質の摩耗が大きく影響されることを報告している(以上の内容は、愛知学院大学 伴 清治教授の文献3より引用)。 図3は2社のジルコニア表面における水熱劣化挙動の電子顕微鏡写真である(JIS A 5207、180℃、1MPa×5hr)。2本の赤線に挟まれた部分がモノクリニック層(単斜晶)であり、2社で大きく相違があることがわかる。フレーム材として使用した場合の影響は少ないが、フルカントゥアクラウンの場合、耐水熱劣化によるモノクリニック層の増大が強度や表面荒さへ与える影響が問題視される可能性がある。 これらのことから筆者は、フルカントゥアジルコニアクラウンを製作する上で研磨がもっとも重要であるため、研磨器材や方法には十分留意する必要があると考える。エナメル質への摩耗性について耐水熱劣化について研磨陶材ブロック研磨前装陶材グレージングジルコニア研磨ジルコニア60万回6万回エナメル質摩耗減量(mm3)2004006008001,0001,2001,4001,6001,8000図2 水中で研磨およびグレージングしたジルコニア板、および研磨した前装用長石系陶材、長石系CAD/CAMブロックに対合するエナメル質の摩耗減量(参考文献1記載のデータを参考文献3でグラフ化したものを引用)。Zirconia表面における水熱劣化挙動の評価(B社)ジルコニアフレーム表面試験条件湿潤化180℃1MPa×5hr(JIS A 5207)強度低下が少ないモノクリニック層Zirconia表面における水熱劣化挙動の評価(A社)ジルコニアフレーム表面試験条件湿潤化180℃1MPa×5hr(JIS A 5207)強度低下モノクリニック層図3a、b 2社のジルコニア表面における水熱劣化挙動の電子顕微鏡写真(JIS A 5207、180℃、1MPa×5hr)。ジルコニアによって、モノクリニック層のできる量に違いがあることがわかる(株式会社クラレノリタケデンタル測定)。abQDT Vol.40/2015 March page0409
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