QDT 2015年6月
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43もう装着で迷わない! 修復物の材質からすぐ選ぶプライマーと装着材料43 現在の歯科臨床において各種修復物の装着にセメントは欠かせないものである。昨今、さまざまな種類の修復物および装着材料が開発され、臨床に幅広く使用されており、それらを整理し臨床に用いなければ優れた修復物、装着材料も長期にわたる臨床成績を獲得することは難しい。近年開発されている新規材料は、成 歯科において装着材料は、古くは接着性を示さないリン酸亜鉛セメントから始まり、現在の自己接着性を示すレジンセメントまで長い歴史をもつ。また、修復法はコンポジットレジンの発達により臨床の幅は広がったが、歯質再生療法が開発されない限り、生体外異物(生体材料あるいは歯科材料)を歯質の代わりに成形し歯質に固定させる意味において大きく変わることはない。そのため、歯質に修復物を固定させる装着材料が必須となる。装着には、合着と接着がある。 合着(luting)とは、修復物と歯質の両表面の凹凸に装着材料が介在し、機械的に嵌合して修復物が保持されることである。また、接着(adhesive)とは、両者間に介在する装着材料がそれぞれに物理化学的に結合することである。 代表的な装着材料の種類を下記に示す。 ・リン酸亜鉛セメント・酸化亜鉛ユージノールセメント・カルボキシレートセメント・グラスアイオノマーセメント・レジン添加型グラスアイオノマーセメント・接着性レジンセメント(MMA系レジンセメント、コンポジット系レジンセメント) 表1には各種装着材料とその物性を示したので参考にしていただきたい。分も十分に公表されない場合が多く、一辺倒のマニュアルでは、その材料の特性を十分に発揮できない可能性もあるため、添付文書を熟読し修得する必要がある。そこで、現在臨床で用いられている種々の修復物と装着材料を整理できるように解説したい。1)リン酸亜鉛セメント☞エリートセメント100(ジーシー)、スーパーセメント(松風)など 歯科においてもっとも歴史の古いセメントで、1878年Rostaing兄弟により市販化された。セメントの所要性質としての性能は高く、被膜厚さは薄く、操作性がよい。しかし、練和法によりその物性が大きく変わってしまうため、熟練が必要である。また、歯質や金属に対する接着性はなく、嵌合力による合着剤である。さらに、練和後初期pHが低く(pH2~3程度)、歯髄刺激性を示すことがある。接着性メタルブリッジやセラミック修復など接着が必須となる修復物の装着には適さない。2)酸化亜鉛ユージノールセメント☞ユージノールセメント(ジーシー)、ハイ・ユージノールセメント(松風)、ネオダイン-α(ネオ製薬工業)など リン酸亜鉛セメントに次いで歴史は古く、1890年代に広く臨床で使用されるようになったとされる。リン酸亜鉛セメントと比較して物性は低く、使用用途はさらに限られていた。現在では、装着材料にはほとんど使用されず、仮着や仮封に用いられている。ユージノールを含有していることから、生物学的特性(歯髄鎮静作用)を示す。米国では、機械的性質を向上させはじめに1.装着材料についてQDT Vol.40/2015 June page0789

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