QDT 2015年6月
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保険診療でも症例によってはCTの撮影が可能となってきた昨今、歯科医師にとってCTはますます身近なものとなってきている。しかし、通常の歯科用コーンビームCTは歯科臨床には十分貢献しているものの、歯内の複雑な構造を把握するにはまだ十分とはいえない。これを受け研究の分野では、すでにより高い精度をもつ工業用マイクロフォーカスエックス線CTを用い、その分析が進められている。また、CT 非破壊で標本の断層像が観察できるエックス線CT法は、1951年に弘前大学の高橋信次が開発した「万能エックス線回転横断撮影装置」にはじまる1。TAKAHASHI TOMOGRAPHYとして海外で高く評価された本法はその後装置が商業化され、とくに臨床医療用として目覚ましい発展をみせた。そしてマイクロフォーカスエックス線CT装置が開発された1980年代以降は、生物試料の研究や工業用としても広く応用されるようになった。当から得られた三次元データをもとに、近年発達の著しい3Dプリンターによって立体化を図ることもいわば必然となってきた。 本稿では、将来の歯内療法、さらには歯科医療全般にインパクトをもたらすと考えられるマイクロフォーカスエックス線CTについての概説と、3Dプリンターを用いた立体化の可能性について述べる。初、CT法から得られるのはアナログデータの断層画像であったが、現在ではコンピューターにより標本内部の三次元的データを短時間に得ることができる。 医療用CTにはエックス線束が扇状に照射されるファンビームCTと、エックス線束が円錐形に照射されるコーンビームCT(CBCT)の2種類がある(図1)。コーンビームCTは撮影範囲が狭く、軟組織の描出能がファンビームCTに比較して低いものの、解像度が高く、金属によはじめに1.マイクロフォーカスエックス線CTとは?■CTのエックス線束の違い■ミリフォーカスとマイクロフォーカスの違い図1 ファンビームCTではエックス線束が扇状に、コーンビームCTでは円錐形に照射される。図2 焦点(線源)が小さいマイクロフォーカスエックス線CTは半影(ボケ)が少ない。焦点焦点一次元検出器列二次元検出器ファンビームコーンビーム焦点(線源)試料検出器ここが小さい明瞭に観察可ミリフォーカス(一般エックス線)マイクロフォーカス
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