QDT2015年7月
8/8
97第10回:Ziel NAGOYA座談会前編 インプラントオーバーデンチャー図2 上顎に埋入されたインプラントの生存率(The State of the Science on Implant Dentistry. Academy of Osseointegration, 2006より引用)。図3a、b 患者が元々装着していた保険の義歯。76.6%ということで、上顎にインプラントを埋入する場合においては、固定性の生存率が高いということになります。ただし、顎骨などの条件が悪くて固定性補綴物にはできない場合に可撤性になる場合もある。ようするに、可撤性の場合、そもそもの埋入条件自体が悪い場合もあるということから、より可撤性の生存率が低いということもあるそうです。 本症例の場合、この患者さんは67が残存歯、7と3がルートキャップで、元々保険の義歯を長く使用されていました(図3)。ただ、強い嘔吐反射があり、その改善を目的としてインプラントが埋入されることになりました。そのため、義歯に対する抵抗はあまりもっておらず、また費用的になるべく抑えてほしいという希望をもっていたため、インプラントを4本埋入するIODが選択されました。 つぎに、IODのアタッチメントの選択なのですが、その前に上顎IODの理想的な条件を考えてみたいと思います。私はこれを、①回転を許容しないアタッチメントを選択すること、②4~6本のインプラントを埋入してインプラント同士を連結すること、③支持・把持・維持を確保することと考えています。 それを踏まえて、IODのアタッチメントを選択していきます。アタッチメントは大きく分けて、ボールアタッチメント、ロケーターアタッチメント、バーアタッチメント、マグネットアタッチメントの4種類が考えられます。理想を考えれば、回転を許容せずにインプラントを連結可能なバーアタッチメントを選択したかったのですが、本症例では補綴スペースの関係から連結が難しいと判断したため、取り扱いが容易で高い維持力が期待でき、複数使用することで回転を抑制できるロケーターアタッチメントを選択しました。 最終的には、インプラント4本にはロケーターアタッチメントを使用し、7と3にはルートキャップという設計にしました。現状の保険の義歯よりも義歯床後縁は短くし、また、嘔吐反射の強い患者さんでしたので、口蓋を抜いた馬蹄形にしました。咬合様式はリンガライズドオクルージョンです。4と6、4には、咬合高径を維持するために、コバルトクロムのメタル上顎に埋入された インプラントの生存率■固定性 5年生存率:87.7%■可徹性 5年生存率:76.6%abQDT Vol.40/2015 July page1009
元のページ