QDT8月
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トレーから考える総義歯概形印象 ―どう選び、どう調整するか―4949 総義歯の製作法についてはいろいろな手法が紹介されている。辺縁形成に使用する材料や印象法の違い、咬合採得の方法、人工歯の咬合面形態に咬合様式と、多くのステップに各流派のこだわりが込められている。それぞれの手法に良さがあるからこそ長年にわたって臨床応用されてきているはずで、そのフィロソフィーの優劣を話題にするのは適切でないだろう。ただ、製作法が異なったとしても、多くの場合義歯製作の第一歩は概形印象である。一般的には既製トレーを用いて概形印象を採り、そこから研究用模型および個人トレーを製作する。概形印象を上手に採ることがで1-1.印象前に口腔内を観察することの重要性 しょせん概形印象だから既製トレーのサイズだけ決めればいい、と思わずにまずは口腔内をよく観察するきれば適合の良い個人トレーができ、適合の良い個人トレーがあればストレスなく精密印象を得ることができる(図1)。少し言い過ぎかもしれないが、個人トレーの形態と適合が良ければ、辺縁形成の材料や印象材の種類などはそこまで大きな問題ではないようにも思われる。逆に、概形印象で失敗するとその後の精密印象でリカバーするのは多大な労力を必要とすることになる。また、既製トレーを合わせていくステップには、精密印象や義歯の調整に活かせるポイントが含まれている。本稿では、既製トレーを主に吸収した下顎に合わせる調整について詳しく述べていきたい。ところから始めたい。無歯顎の口腔内は可動性の軟組織で構成されている。模型はある一瞬の形態を硬い石膏に置き換えたものなので、後からすべての情報を読み取るのは難しい。視診と触診でできるだけ多くの情報を得ておくことがたいせつである。具体的には、顎堤の吸収程度、外斜線と顎舌骨筋線の位置、レトロモはじめに1.まずは口腔内の観察から!概形印象でも完成義歯に近い形態を目指そう!図1a、b 概形印象が完成義歯に近い形態にうまく採れると、適合の良い個人トレーが製作できる。個人トレーが良く合っていると、辺縁形成は床縁のイメージを柔らかい材料で確認する操作になり、失敗しなくなる。abQDT Vol.40/2015 August page1115
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