QDT8月
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Denture Treatment Manual122はじめにあまり日の目を浴びてこなかったパーシャルデンチャー 某歯科医師対象の咬合・補綴治療計画セミナーでの1コマである。パーシャルデンチャーをレクチャーする際、そのコースのメインディレクターを務めていらっしゃった歯科医師から受講されている歯科医師へ向けて、以下のような一連の“問いかけ”が行われた。「この中で欠損補綴においてインプラント治療をまったく行っていない先生はいらっしゃいますか?」 これにはまったく受講者の手は挙がらない。次に、「では、来院される多数歯欠損の患者さんに対して、保険治療と自費治療をすべて合わせても、インプラント治療を行う場合がもっとも多いという先生はいらっしゃいますか?」 と問いかけられた。しかし、この問いかけにも手は挙がらない。最後に、「では、多数歯欠損には、パーシャルデンチャーを選択する場合がもっとも多いという先生はいらっしゃいますか?」 と問いかけられた。これには、ほぼすべての先生方が挙手された。その結果を見て、メインディレクターの先生はこうおっしゃった、「この質問はどこでお聞きしても同じ結果になります。インプラントメーカーのインストラクターをされているような先生の中にはインプラントがもっとも多いとおっしゃる先生もたまにいらっしゃいますが、やはりブリッジでは対応できない多数歯欠損に対しては、パーシャルデンチャーが選択されることがほとんどなのです」 しかし、臨床においてはそれほど“パーシャルデンチャーが選択されている”にもかかわらず、近年の歯科専門誌、あるいは学術講演会では、オールセラミックスなどの審美補綴やインプラント補綴、それらにともなう矯正治療や骨再生法などをテーマにしているものが圧倒的に多い。デンチャーワークがテーマとして取り上げられていても、そのほとんどがコンプリートデンチャー(総義歯)であるように感じる。 これまで筆者は、欠損歯列に対して適正な診査・診断が行われ、補綴設計においてパーシャルデンチャーが選択された際の対応や術後の評価などについて、もっと情報が欲しいと願ってきた。しかしその機会は、筆者のこれまでの技工ライフにおいて、決して多いとはいえなかった。インプラントは有効だが、すべての患者が受けられるわけではない 当然、筆者も欠損補綴に対するインプラント治療の有効性は理解しており、また、現代の歯科臨床において、欠損歯列に対してはインプラント治療が第一選択肢であることに異論はない。しかし患者がどんなに希望しても、全身的な問題により術者側がインプラント治療は “NO!”と診断する場合がある。逆に、術者側からoptimum(最善な、最適な)な治療計画としてインプラント治療を提案しても、患者側から経済的・感覚的な問題により、インプラント治療は“NO!”と拒否される場合もある。そして冒頭で述べたように、実際にはまだまだインプラント治療が選択されないケースが多いのも事実である。 以前、筆者がある高貴なご婦人の患者の初診に立ち合った際、そのご婦人は「私は、お金はあっても骨がないみたいなのよ……」とおっしゃっていた記憶がある。このような何かしらの理由によってインプラント治療を受けることができない患者に対して、“インプQDT Vol.40/2015 August page1188
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