QDT 2015年10月
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53 近年のDigital Dentistryの進化については論をまたない。すでに使用できるマテリアルは数多く、世界的にはすでにフェイシャルスキャンデータとDICOMデータの融合や、患者の顎運動を記録した上でのバーチャル咬合器の応用などが試みられており、いまだに多くの可能性が残されている。 もちろん、こうした技術の進化をキャッチアップして すでに市場には多数のCAD/CAMシステムが上市されているが、これらを大別すると、スキャナーと設計用ソフトウェアのみを歯科医院に設置し、実際の加工はセンターに外注する「センター方式」と、これらに加えてミリングマシンまでを歯科医院に設置して加工までを行う「インハウス方式」の2種となる。前者には、後者よりも大型のミリングマシンを用いるためにより安定したミリングが行えることや、各メーカーの管理下でミリングが行われるために数年間の保証期間が付与される、といったメリットがあり、後者には何よりも、その場でミリングが行えるために納期が大幅に短縮される、といったメリットがある。しかしながら、本稿で後述するような多数の支台歯を同時にスキャン・製作するような症例の場合、インハウス方式では精度や製作時間の面で厳しく、従来法による印象採得の上で、精度の高いラボ用スキャナーでスキャンを行い、ミリングは外注するほうが現実的である。 そこで本症例では、センター方式のCAD/CAMシステムのひとつである「Straumann CARES CADCAM」システム(Straumann,ストローマン・ジャパン、以下、CARES)を選択した。CARESはすでに2010年には日本に上陸しているが、この2015年に新発売されたStraumann いくことは現代を生きる歯科医師にとって必須であるが、その一方で、既存の最新技術がわれわれの日常臨床においてどのレベルに達し、いかに有用であるかを検証することも重要である。そこで本稿では、フルマウスリコンストラクションの再治療を要した患者に対し、全歯にわたってCAD/CAMジルコニアフレームを用いたクラウンを装着した症例を供覧し、その試みとしたい。CARESスキャナーD7(図1。Dental Wings,ストローマン・ジャパン)はPCを内蔵した非常に高機能な装置で、同社の従来機種と比較して①スキャニングレンジが大幅に広くなりスキャンミスが低減、②解像度と同時にスキャンスピードも向上、③インプレッションスキャン機能を搭載、といったメリットをもっている。また、最近のトレンドに沿い、高透光性のジルコニアディスク「zerion HT」がラインナップされている点も選択のポイントとなった。もちろん適合性に関しても、後発のシステムだけによく練られており、精度は高い。さらに、従来ではライプチヒ(ドイツ)にデータを送信・製作していたが、このたび日本国内にもミリングセンターが建設されたため、納期も改善されている。図1 Straumann CARESスキャナーD7。はじめに本稿におけるCAD/CAMシステム選択のポイントQDT Vol.40/2015 October page1451
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