QDT 2015年10月
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岩田 淳歯科医師:松川歯科医院奈良県橿原市醍醐町502‐34短期集中連載(全3回)診断用ワックスアップ―その見どころとポイント―歯科医師のための第1回診断用ワックスアップを始める前に知っておきたいこと66はじめに─診断用ワックスアップとは何のために行うのか?─ 補綴修復治療の目的とは、機能の回復、審美性の改善、残存組織の保全である。その治療の長期的安定を得るためには、前歯部の治療であっても臼歯を含めた全体を見て咬合の安定が得られているか、また臼歯部の治療であっても前歯を見てアンテリアカップリング、アンテリアガイダンスが得られているかを確認する必要がある。そして最終的な治療後の状態が術前にイメージできる必要がある。そのイメージ作りに有効となるのが、診断用ワックスアップである。 診断用ワックスアップとは、咬合器に装着された歯列模型に対してワックスを添加・あるいは模型を削合し、適正な歯冠形態を与えることで、補綴修復治療終了後の状態を可視化するものである。初診時の基礎資料から得られた情報をもとに診断用ワックスアップを行うことにより、審美性・機能性の診断を行い、補綴修復範囲(修復歯、修復形態、修復材料、補綴設計など)を決定する。修復範囲が限局的であり、なおかつ対合歯や隣在歯、咬合平面などに問題がない場合は診断用ワックスアップが不要の場合もあるが、修復範囲や修復治療の複雑性によっては数回必要な場合もある。診断用ワックスアップにより、トゥースポジションに補綴修復治療で対応不可能な問題があれば、矯正治療が必要になると診断することができる。 診断用ワックスアップはあくまで患者に見せるためだけのものではなく、歯科医師、歯科技工士、患者が治療ゴールのイメージを共有して補綴修復治療を成功させるために非常に重要になるものである。1.診断用ワックスアップは治療のどの段階で行うのがよいか? 診断用ワックスアップは、総合診断と治療計画の立案のために製作される「Primary Diagnosis wax up」、治療の過程で歯冠形態や歯頚ライン、咬合平QDT Vol.40/2015 October page1464

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