QDT 2015年10月
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歯科医師のための 診断用ワックスアップ ―その見どころとポイント―67①Primary Diagnosis Waxing up総合診断、治療計画の立案を行うための最初の診断用ワックスアップ。②Secondary Diagnosis Waxing up治療中において、崩壊した歯牙・歯列の形態を一時的に整え、機能性と審美性を回復するためのセカンドプロビジョナルレストレーションを製作するためのワックスアップ。このプロビジョナルレストレーションを装着することにより炎症と力のコントロールを再評価する。③Final Diagnosis Waxing up最終補綴修復装置製作の参考となるファイナルプロビジョナルレストレーションを製作するためのワックスアップ。面、咬合高径などにさまざまな修正点が必要になり、再度形態を整えて審美性・機能性を回復するために行う「Secondary Diagnosis Waxing up」、最終補綴修復装置製作の参考となるファイナルプロビジョナルレストレーション製作のための「Final Diagnosis Waxing up」に大別される(図1)。 前述のとおり、修復範囲や修復治療の複雑性によっては不要な場合や数回製作が必要な場合がある。いずれの段階でも最終的な補綴修復形態をイメージしたものであり、診断用ワックスアップとそれをもとに製作したプロビジョナルレストレーションを使用しながら、審美的・機能的に問題がないかを確認し最終的な治療ゴールのイメージに近づけていき、速やかに最終補綴修復段階へと移行していく必要がある。2.診断用ワックスアップを歯科医師が行うことで何が得られるのか? 日本では1983年から歯科医師国家試験に実技試験が廃止され、現在では歯科医師が歯科技工を行うことは学生実習の限られた期間にのみ行う場合が多くなっている。卒後歯科医師免許を所得してからは、大学附属病院の補綴科や一部の限られた歯科医師のみが歯科技工を行っており、現在では歯科技工士がその役割を大きく担っている。 CAD/CAMを含めた現在の歯科技工技術は材料学的特性を含めて日々進歩しており高度な専門知識が必要とされ、歯科医師がすべてを理解することは難しくなってきている。しかし補綴修復分野で新しい材料や技術が開発された場合でも、補綴修復治療の基本的な概念や技術には大きな変化はないため、歯科技工の基本的な知識と技術を歯科医師がもつことは重要である。実際の臨床では、診断用ワックスアップは基礎資料による患者情報と治療ゴールのおおまかなイメージを歯科技工士に伝えて製作を依頼する場合がほとんどであるが、歯科技工士が情報を理解し歯科医師と患者のもつ治療ゴールのイメージが共有できれば、問題なく補綴修復治療は成功に向かっていくと思われる(図2)。 しかし現在の若手歯科医師はワックスアップや人工歯排列を自分で行うことがほとんどないため、理想的な歯冠形態や歯列の連続性、咬合平面や咬合高径などを決定する際に判断が難しく、歯科技工士に適正な指示が出せない問題が生じている。逆に若手技工士の中には歯科医師とのディスカッションが不足し、補綴修復形態のイメージ共有がとれずに何度も再製作が必要になる場合もある(図3)。 歯科医師がフルカントゥアのワックスアップを毎回行う必要はないが、若手の歯科医師の場合はまだ個々の歯冠形態および連続性などのイメージ構築が難しい図1 補綴修復治療における診断用ワックスアップの段階(本多正明.咬合補綴治療計画セミナー シラバスより引用・改変)。診断用ワックスアップQDT Vol.40/2015 October page1465
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