QDT 2015年12月
3/8

岩田 淳歯科医師:松川歯科医院奈良県橿原市醍醐町502‐34短期集中連載(全3回)診断用ワックスアップ―その見どころとポイント―歯科医師のための701.臼歯部の診断用ワックスアップを始める前に知っておきたいこと 臼歯部の診断用ワックスアップについても、前歯部の診断用ワックスアップと同様に全顎的な診査・診断を行ったうえで進めていく必要がある。臼歯部の補綴修復治療においては審美性よりも機能性における役割が大きい。食物を噛み砕き擦り潰し、嚥下できるようにするために臼歯の形態、特に咬合面形態は重要な役割を担っている。また、咬合を安定させるためには上下の臼歯がしっかりと嵌合する咬合面形態をとらなければならないが、そのために重要になるのが臼歯の位置と形態である。臼歯の位置が悪ければ対合歯と嵌合するための適正な臼歯咬合面形態を製作することが困難となり、また位置に大きな問題がなくても対合歯と嵌合する形態をしていなければ、咬合の安定を得ることはできない。 臼歯の診断用ワックスアップを始めるにあたって、前歯とくに犬歯の位置と形態に注目し、下顎の側方運動時に犬歯の滑走経路、滑走距離がどのようになっているのか確認を行い、同時に臼歯離開がどのように起こっているのかを確認する必要がある。また咀嚼運動時に対合歯の機能咬頭がどのように入ってきて抜けていくのかは咬合器上での確認には限界があり、咀嚼運動時に咬合干渉が生じにくいような形態を与える必要がある。 修復歯数や修復範囲が少なく、治療部位が1級窩洞で小さい場合は、咬合に大きな問題が出にくいので解剖学的形態に従って修復を行うことができる(図1)。修復歯数や修復範囲が多く、咬合面の大部分を被覆するアンレーやクラウンの場合は、解剖学的形態を逸脱しない範囲内で、補綴学的形態を与える必要がある。この場合の補綴学的形態とは、咬頭嵌合位では上下の咬合接触により臼歯が安定し、機能運動時には速やかに離開して干渉しにくい形態である(図2)。補綴修復装置は強度や摩耗性が天然歯と異なるため、与えた咬第3回(最終回)診断用ワックスアップの実際・臼歯部編QDT Vol.40/2015 December page1760

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です