QDT 2015年12月
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森田 誠*1/木林博之*2*1歯科技工士・京都歯立屋:京都府長岡京市開田1-21-24*2歯科医師・きばやし歯科医院:京都府長岡京市開田1-21-21The Symmetric Central Incisors―The Duplication of the Subgingival Contour of the Provisional Restoration to the Denitive Restoration― 審美歯科治療において、上顎左右中切歯の対称性は非常に重要であり、審美的な結果に大きな影響を与える。特に辺縁歯肉の対称性は、歯冠形態を規制するとともに、口唇との調和においても重要な要素のひとつである。 歯周組織は補綴装置の歯肉縁下カントゥアに対し、ある程度の許容範囲をもつ。天然歯修復におけるクラウンカントゥアについては、これまでにさまざまな考えが提唱されてきたが、いまだ明確な結論が出ていないのが現状である。しかし、クラウンカントゥアが歯周組織に与える影響は非常に大きく、ときには辺縁歯肉の炎症や形態不良などを引き起こすこともあり、それが審美歯科治療の結果を大きく左右する。辺縁歯肉をマネージメントする方法、すなわちGingival Frameworkの治療オプションには、矯正的方法、外科的方法、そして補綴的方法が挙げられる。その中でも補綴装置の歯肉縁下カントゥアの違いを利用する補綴的方法は、極めて有効な方法である。補綴的方法は、天然歯修復だけでなく欠損修復(オベイトポンティックやインプラント支持型クラウン)にも利用することが可能である。この方法を成功に導くためには、 歯周組織を常に観察し、その歯周組織と調和のとれた最適な歯肉縁下カントゥアについて、十分に考察しなければならない。 歯科技工士は、歯肉縁下カントゥアの形態を製作する際、歯肉圧排された状態の模型上で、自身の経験と知識を基に“勘”を頼りにすることが一般的である。そのため、現状では、それぞれの経験と知識の差により補綴装置の歯肉縁下カントゥアの形態にばらつきが生じる。そこで、明確な技工作業上の指標をもち、“勘”に頼らず、再現性の高い補綴装置の製作方法について試行錯誤した結果、われわれは以下の方法にたどりついた。 まず、歯周組織を熟知する歯科医師が、プロビジョナルレストレーションの歯肉縁下カントゥアの形態を調整する。次に、調整された歯肉縁下カントゥアに裏打ちされた遊離歯肉の形態を、作業用模型上に再現する。歯科技工士は、その遊離歯肉に対応した歯肉縁下カントゥアを、”勘”や想像に頼らずセラミックスに再現する。その結果、患者の個性に応じた補綴装置の形態や色調の創造に、より集中する事が可能となる。 現在、われわれの日常臨床における前歯部審美修復症例では、特別な場合を除きこの手法を用いて補綴装置を製作している。今回、この手法を用いた6症例を提示させていただく。プロビジョナルレストレーションの歯肉縁下カントゥアを再現した補綴装置製作のためのWorkow1.初診時正面観2.診断用ワックスアップの製作3.支台歯形成4.支台歯の印象採得5.プロビジョナルレストレーションの歯肉縁下カントゥアの調整6.辺縁歯肉の左右対称性および辺縁歯肉に炎症のないことを確認7.ダイ模型とプロビジョナルレストレーションの適合確認8.プロビジョナルレストレーションの歯肉縁下カントゥアの印象準備

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