QDT 2016年1月
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連載を始めるにあたって66全部床義歯をシンプルに考えよう!66How to からWhyへ。常識と科学の視点から情報選択全部床義歯全部床義歯をシンプルに考えよう!シンプル連載©Can Stock Photo Inc. / michaeldb全部床義歯の現状を理解する―「義歯の完成度が高ければ患者満足度も高いのか?」など―第1回 2006年から2009年にかけて、筆者(土屋)はアメリカの州立インディアナ大学補綴科大学院で補綴専門医教育を受けた。その時に感じたのが、「補綴の基本は全部床義歯学」ということであった。 例えば、無歯顎は残存歯の影響を受けないため、理想的な位置に人工歯を排列することができる(図1)。このような、理想的な歯の位置を学ぶことは、咬合を一から再構築するうえで非常に重要な出発点であり、有歯顎者にも応用できる補綴の基礎である。多くの補綴治療がここから始まると言っても過言ではない(図2)。 それと同時に、「全部床義歯学には科学的根拠が乏しい」ということも学んだ。補綴学において科学的根拠が確立されている事項は非常に少ない。今回の連載でも、全部床義歯学を科学的根拠という観点からすべて説明・証明することは残念ながらできない。だからといって論文をないがしろにするのではなく、その情報を収集し、常識的・科学的に考察することにより、より良いと考えられる情報・術式を選択していくことが重要である。 全部床義歯学ばかりでなく、補綴を学ぶ時には、「How to」(どのようにするか?)に意識が行きがちになるが、「Why」(なぜするか?)を知ることで、全部床義歯がシンプルに考えられるようになる。本連載でもそこに重点を置きたい。*1,2歯科医師・土屋デンタルクリニック大分県佐伯市春日町2‐1*1米国歯科補綴専門医/米国補綴学会フェロー〔指導医〕/福岡歯科大学臨床教授土屋嘉都彦*1/諌山浩之*2QDT Vol.41/2016 January page0066
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