QDT 2016年5月
4/8
保険適用となったさまざまなCAD/CAM冠用材料39 CAD/CAM冠が日本の保険診療に導入されて、今年の春で丸2年を迎え、今やCAD/CAMという用語が日常の歯科臨床の中でクラウンやインレーと同等に使われている。このCAD/CAM冠が登場した平成26年4月の保険改正時点では、表1に示すような一定の施設基準や、材料に関する規定が提示されており、だれもがすぐ利用できるものではなかった。本表中、①にある歯科医師サイドの専門知識に関しては、とくにどのような専門知識かという規定は示されておらず、支台歯形成方法や接着方法などに関する技術的な部分においても、歯科医師の判断に完全に委ねられていた。一方で、②に示される項目では、施設基準に適合していることを示すために、歯科技工士名や歯科技工所名、使用する歯科用CAD/CAM装置名を書いた施設基準届出を厚生労働省の地方支部局である地方厚生局の局長に出さなければならなかった。 それまで主として自費診療用に導入されてきたCAD/CAMシステムが、急に保険診療に利用できることになったため、こうした機器を扱ってこなかった歯科技工所などにおいては混乱を招いた。また、CAD/CAM冠用材料に関しても、表1に示した定義のいずれにも該当することとされている。 こうした一定の施設基準に対して書類申請を行い、定義に該当するブロックを使用すれば、すぐにCAD/CAM冠の利用が可能になるが、この定義に則って利用できる補綴装置は従来のレジンジャケットクラウンの置き換えで、現在のCAD/CAMシステムで使える機能のほんの一部でしかない。また、無機質フィラーの含有率が60%以上と提示されているが、それが重量%か体積%かも提示されていないのが現状で、マトリックス材料の材質や実使用する上で重要な強度の保障に関してはまったく指定されていない。しかし、工業的に内部欠陥がほとんどない状態にまで加熱重合され、通常の歯冠補綴用硬質レジンと比較して強度が向上したレジンブロックが提供されたことで、当初懸念されていた破折などの心配は少なくなった。しかし一方で、レジンセメントと結合できる未重合レジンモノマーをほとんど含まないため、接着前処理としてフィラーを対象としたシランカップリング処理を行う必要があるなど、臨床使用する上での余計な手間が増えてしまったことは間違いない。■保険診療でのCAD/CAM冠利用のための施設基準と材料の定義表1 保険診療でのCAD/CAM冠利用のための施設基準と材料の定義。はじめに施設基準①歯科補綴治療に係る専門の知識及び3年以上の経験を有する歯科医師が1名以上配置されていること。② 保険医療機関内に歯科技工士が配置されていること。なお、歯科技工士を配置していない場合にあっては、歯科技工所との連携が図られていること。③ 保険医療機関内に歯科用CAD/CAM装置が設置されていること。なお、保険医療機関内に設置されていない場合にあっては、当該装置を設置している歯科技工所と連携が図られていること。CAD/CAM冠用材料における定義① 薬事法承認又は認証上、類別が「歯科材料(2)歯冠材料」であって、一般的名称が「歯科切削加工用レジン材料」であること。② シリカ微粉末とそれを除いた無機質フィラーの2種類のフィラーの合計が60%以上であり、重合開始剤として過酸化物を用いた加熱重合により作製されたレジンブロックであること。③1歯相当分の規格であり、複数歯分の製作ができないこと。④CAD/CAM冠に用いられる材料であること。QDT Vol.41/2016 May page 0623
元のページ