QDT 2016年6月
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歯科臨床の動画記録の規格性を考える(前編:理論・機材編)41 近年、顎運動を対象に治療経過や術後経過を提示する症例発表も多く、従来の口腔内写真への追加資料として動画を用いたものを散見するようになってきた。しかし、口腔内規格写真とくらべると、動画では術者の主張する対象が適切に表現されていないこともある。その理由として考えられるのは、撮影対象が歯牙、筋肉、顎関節といった広範囲にわたり、撮影機材、撮影角度や被撮影者の姿勢などの基準が統一されていないことが考えられる。 口腔内写真では、撮影部位は5枚法を基本とし、撮影倍率や絞り、ISO感度などの設定を決めておけば、比較的均一な結果が得られた。動画においてもカメラの設定を一定にして撮影を行っていくことは同様であるが、それに加えて、患者への顎運動の指示も毎回統一することが必要となる。つまり、主観的要素をできるだけ排除した一定の指示が求められるということである(一定の指示に対する動きの違い・変化を見ることが重要なので、指示は一定にするが、動きは無理に一定に 臨床において、動画を診査のひとつとして考えると、その位置付けは視診の延長線上にあるといえる。定量的な情報は得づらく、実際に診療室で患者を前にして視診・触診・その他機能診査を併せて行った場合にくらべると、診断材料としての質は当然低い。 この現状に対し、改めて動画の規格性に関する要素について検証する必要があると考えた。実際の撮影にあたっては、術者の診療スタイルや考え方による多様性があってしかるべきであるが、最低限口腔内写真同様の規格性が必要であると考えている。 そこで本企画では、動画の規格性を高めるための具体的な取り組みを理論編と実践編の2回に分けて解説する。ぜひ参考にしていただければ幸いである。する必要はない)。 動かし方の指示については、あいまいな表現は避け、わかりやすく伝える。できれば見本の動画を用意し、それに合わせて運動させると撮影が円滑に行いやすい。あるいは、見本の図とメトロノームのような一定のリズムを刻む道具を用いてもよい。患者の慣れや心理的要素によっても左右されると思われるので、あらかじめ指定する運動の練習をさせたり、緊張を解いておくような配慮が必要である。 しかし、顎運動の時系列における比較や、ケースプレゼンテーションでの追加資料としての利用を考えたとき、だれもが直感的に動態を把握できる“動画”という記録方式は非常に有効であると考えられる。執筆にあたって1.理論編 (執筆:佐野瑞樹)①動画における規格性の意義②規格性の解釈QDT Vol.41/2016 June page 0763
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