QDT 2016年10月
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安全な支台歯形成とは何か? ―「支台歯形成の面基準」のエッセンス―(前)2323はじめに 私たちは、『The Basic Planes for Tooth Prep-aration』(支台歯形成の面基準)という本を、クインテッセンス出版社より、2016年4月に出版しました(編集部注:西川氏、桑田正博氏〔歯科技工士、クワタカレッジ校長〕、茆原氏、大西氏による共著。詳細は33ページを参照)。本書はそのタイトルにもあるように支台歯形成の面基準について書かれたものです。 支台歯形成については、「アンダーカットがなくて、だいたいの歯の形に相似に削れば、なにも細かな基準などなくてもクラウンは作れるので、わざわざ支台歯形成の面基準など設定しなくても良いのではないか」という考え方もあるかと思います。 歯は1cmくらいの立方体で、形成長になると前歯で高さが9mmくらいでしょうか、臼歯部でせいぜい6mmくらいの支台歯に、あまり細かな面を考える必要はないのではというのも確かにうなずける意見です。 そもそも、なぜクラウンを入れるのかというと、クラウンを入れないと仕方がない環境になったからです。痛みを訴える人もいれば、噛めない、舌触りが悪くなった、発音がしにくい、見た目に悪いとかさまざまな訴えがありますが、要は機能に問題が生じた結果、クラウンを入れざるをえなくなったのだと思います。 もちろん、ここでの機能というのは噛める・噛めないだけではなく、審美的な要求も含みます。う蝕でもなく、色が悪いでもなくて審美的なクラウンを希望される患者さんも、患者本人にとってみれば見た目という機能が悪くなったからでしょうから。 では機能的な回復ができるような支台歯形成を行えば、「安全な支台歯形成」になるのでしょうか。もし機能的な回復だけを目指すのであれば、私たちなら歯頚部からすっぱりと落とした形成にします。好きな形にクラウンが作れますし、好きな色を出せます。咬合も自由自在になります。 実際、前歯ではそういう形成をよく目にします(図1)。歯頚部のショルダー形成の幅を広くすると歯科技工士さんも楽に色が出せるのです。マージンも、歯肉縁下に深めに入れれば色はさらに自然に見えます。支台歯長を短くすれば切端部の審美は簡単に回復できます。このような、幅広いショルダー形成をした細くて短い支台歯では、色も咬合も形態も満足できるクラウンが作れますが、はたして本当に良い形成でしょうか。繰り返しますが、機能的な回復ができる形成は「安全な支台歯形成」なのでしょうか。もちろん答えはノーです。 支台歯は、クラウンが側方力で簡単に脱離しないような十分な抵抗形態が必要ですし、支台歯自体の十分な強度を確保しなければなりません(図2)。同時に上細く短く深い支台歯なら、クラウンの製作は簡単だが……図1a、b 支台歯形成量をタップリとって細く短く深くなった支台歯では、色も形態も回復は簡単になりますが、このケースのように継続的な側方力が加わると脱落しやすく、構造力学的にも不利となります。装着された状態を見ると歯肉は一見正常そうに見えますが、実際には隣接面部において炎症がみられます。abQDT Vol.41/2016 October page 1385
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