QDT 2017年6月
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30Feature article #130■そもそも、診断用ワックスアップはなぜ必要か?土屋(賢):本日はお集まりいただきましてありがとうございます。今回の座談会では、「診断用ワックスアップとプロビジョナルレストレーション」を題材に、補綴治療を行う上での歯科医師と歯科技工士によるプロセス、そしてチームワークについて、できるだけ臨床現場の実例を含めてディスカッションしていきたいと思います。 まず、前半は診断用ワックスアップの話題で進めてまいります。そこでまず、診断用ワックスアップの定義ですが、これは「将来回復すべき歯冠形態をワックスでシミュレーションすることで、個々の患者さんがもつ問題点と最終補綴物に与えるべき形態を三次元的に浮き彫りにし、そこから診断と治療計画の立案を行うもの」ということは皆さんご存知のとおりだと思います。ただ、臨床の現場でこの診断用ワックスアップを歯科医師と歯科技工士が連携して行えているかどうかについては、必ずしもそうではない場合もあるかと思いますので、今回はその重要性についても示していければと思います。 診断用ワックスアップでシミュレーションし、診査できる要素は、機能的な要素と審美的な要素に大別できます(表1)。 たとえば、このような患者さんが来院されたとします(図1、2)。初診の段階で下顎は両側遊離端欠損、前歯部も歯の移動が起きていて、咬合の崩壊がかなり進んでいます。この写真だけでは最終的な補綴物をどのような位置、形態で提供すればよいかというイメージがつかめませんので、そこで診断用ワックスアップを行います。 診断用ワックスアップを行うにあたっては、まず顔貌と上顎中切歯の位置関係を決めていくことが重要だと思います。そこから、臼歯部に至る形態変化を与え、上下顎の咬合関係や咬合平面を決定していきます。また、咬合高径の設定も行いますし、上顎中切歯の位置から下顎中切歯の適切な位置を検討することもできます。ですから、診断用ワックスアップは支台歯形成を行った後ではなく、初診時の模型で行うことが求められます。 また、ここで後半の話題についても予告しておきたいのですが、後半ではプロビジョナルレストレーションに対して、臨床現場で歯科医師と歯科技工士がどのような形でチームワークを発揮していくのか、というお話をしたいと思います。そもそも、プロビジョナルレストレーションというのは、最終的な補綴を見越し診断用ワックスアップでシミュレーションし、診査できる要素とは?診断用ワックスアップの診査項目表1 診断用ワックスアップの診査項目。歯の位置歯の形態歯の長さ歯の幅歯軸咬合面接触状態アンテリアガイダンス歯列弓咬合平面発音リップサポートタングスペース正中線切縁平面スマイルライン咬合平面歯肉レベル歯冠縦横比率歯冠排列機能的診断項目審美的診断項目QDT Vol.42/2017 June page 0880
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