QDT2020年9月号
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56失敗しない総義歯臨床テクニック~診療室とラボとの連携~■はじめに 前回(8月号)は大竹歯科技工士から、臼歯部の人工歯排列と付与する咬合についての考え方を紹介してもらった。歯科医師の立場からすると、歯科技工士としっかりとコミュニケーションをとりながら排列位置や咬合様式を決定していたとしても、残念ながら修正をお願いしなければならない場合は少なくない。そのため、前回の論文中の「排列位置は咬合器上で決まるのではなく、口腔内で決まる」や「排列位置の再調整が必要であると認識しておくべきである」という言葉はたいへんありがたく、心強く感じた。 そこで今回は、いよいよ蝋義歯の試適時に何を見るべきなのかを考えていきたい。■蝋義歯試適の重要性 蝋義歯試適は重要であるにもかかわらず、多くの歯科医師が短時間で簡単に済ませているのではないだろうか。口腔内に蝋義歯を装着し、鏡を持たせて軽くタッピングさせ、問題ないかを患者に問診する程度では重大なエラーを見逃してしまう可能性は高い。 まず、歯科医師と患者の両者に認識してもらいたいことは、“蝋義歯の時点では簡単に修正できることが、第9回 蝋義歯試適の悩み:「咬合採得のミスを見逃してしまう!」連載失敗しない総義歯臨床テクニック~診療室とラボとの連携~松田謙一*1/大竹裕之*2*1 歯科医師*2 歯科技工士*1、2ハイライフ大阪梅田歯科医院大阪府大阪市北区梅田2-6-20パシフィックマークス西梅田2F講演者論文講演者論文重合後の段階では修正は困難図1 蝋義歯では人工歯の移動、床縁の長さ、研磨面の形態などの修正は比較的容易に実施できるが、重合まで進むとそれらの修正は相当困難となる。人工歯の移動床縁の長さの修正研磨面形態の修正各種修正は比較的容易大幅な修正は相当困難蝋義歯重合後QDT Vol.45/2020 September page 1178

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