57第9回 蝋義歯試適の悩み:「咬合採得のミスを見逃してしまう!」重合工程を終えると修正が非常に困難となる”ということである(図1)。実際、筆者の臨床においては、いったん蝋義歯試適まで進んでいたとしても、最終印象や前歯部試適まで戻ってやり直すことは少なくない。つまり、蝋義歯の試適は「ここで見逃すと、もう修正できない」という認識を強くもって臨むべきである。■現義歯との比較─蝋義歯試適の前に─ 本連載でたびたび記してきたが、新義歯を設計する際には、現義歯のどのような点を改善したいかというOne More Step!イメージを必ずもつことが大切である。具体的に改善したい点が蝋義歯に適切に反映できていることをあらかじめ確認しておくとよい(図2)。これは、蝋義歯試適の前に確実に押さえておきたいステップである。■蝋義歯試適では何を見るか それでは、蝋義歯試適では何を確認していくのかを説明したい。 むろん、最終の試適であるため義歯のすべての要素を確認すべきであり、義歯床縁の長さ、適合、研磨面の形態、顎間関係、人工歯の排列位置、咬合状態、審現義歯の変更点の確認図2 現義歯において計画していた変更点が蝋義歯に確実に再現できているかを確認する。レトロモラーパッドを被覆する有効な耐圧面積内に人工歯を排列するため、人工歯数を減らす変更後現義歯の変更点模型に擬似粘膜を付与した実習用模型図3 模型に擬似粘膜を付与した実習用模型(大竹歯科技工士製作)。左図では上下の蝋堤が接触しているように見えるが、右図のように上下咬合床を模型にしっかりと押さえて咬合させると、左側がかなり高いことがわかる。つまり、口腔内でも容易にこのようなことが起きていると考えられる。押さえて咬合させると左側がかなり高いことがわかる右左側とも咬合接触しているように見えるQDT Vol.45/2020 September page 1179
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