筆者自身もこの考えに異論はない。しかし、歯頚部側の彩度・明度・色相さえ合わせれば目標歯を模倣できているのかといえばそうではないと考える。そのための要素はさまざまであると思うが、筆者が口腔内に装着されたセラミッククラウンを観察してきた中で、目標歯を忠実に再現するべきだと感じるのはマメロンである。 筆者はセラミックワークを始めた当初から、単にシェードガイドのA3という指示であっても、マメロンを丁寧に築盛することを目標に製作してきた。本来、A3という指示ならばシェードガイドに近いマメロンを製作すれば問題ないと思うが、自分の中で勝手にセラミックワークの醍醐味だと考えていた。当時、Feature article #2ワンランク上のセラミッククラウンを目指して─マメロンの表現に着目してクオリティアップを図る─前編:写真からマメロンを読み取る!はじめに 審美性が重要になる前歯部、とくに反対側同名歯の模倣が必要な単冠など少数歯のセラミックワークにおいては彩度・明度・色相が重要であり、それらの要素を天然歯に合わせなければセラミッククラウンを口腔内で調和させることができないことは周知の通りである。逆に言えば、とくに影響の大きいと思われる歯頚部側の彩度・明度・色相が目標となる天然歯と合っていれば、患者満足度が得られる確率は高くなる。これはすなわち再製作を避けることにもつながり、臨床において非常に重要である。そのためセラミックワークを行う上では、まずはとくに歯頚部の彩度・明度・色相を目標歯に近似させるためのノウハウを構築することは必須といえる。
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