QDT 2022年2月号
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骨縁上組織付着(生物学的幅径)そして前歯部など審美的要求がある場合に、適合の良い補綴装置であれば6、歯肉縁下にマージンを設定することは容認される。 歯肉縁下カントゥアに、根面から移行的にConcaveやConvex形態を付与するには、マージンの設定位置が深ければ深いほど、与える形態の自由度は増す。歯肉縁下にConvexカントゥアを与えて辺縁歯肉を退縮させることは、炎症や辺縁歯肉の安定には有利であり7、さらにThin Gingival PhenotypeをThick Gingival Phenotypeに変更できる可能性がある(連載第1回参照)。②Convexカントゥアの形態とフィニッシュラインの関係 Convexカントゥアと歯根面とのなす角度について、Sorrensen8によれば45°までなら正常と考えられ、坪田9は90°での長期症例を報告している。生体組織は角のない滑らかな曲線を有していること、および歯肉縁下における拡大視野下でのセメント除去の限界を考慮すると、筆者はこの角度をできれば60°程度までに抑えたいと考えている。Convexカントゥアの形態(歯根面とのなす角度)は、目標と設定した辺縁歯肉の退縮幅と、歯肉縁下におけるフィニッシュラインの設定位置に大きく影響される。すなわち、退縮後の辺縁歯肉の位置とフィニッシュラインの位置との距離が長くなるほど、その角度は小さくなるが、逆にその距離が短くなると大きな角度を与えざるを得なくなる(後述、図4)。歯肉縁下カントゥアの形態を考える前に、まず歯肉縁下のどこまでがフィニッシュラインの設定位置として適切なのかを検討する必要がある。そこで考慮すべき事項は、歯肉溝を含めた骨縁上組織付着(Supracrestal Tissue Attachment)とフィニッシュラインの位置関係である。③骨縁上組織付着(Supracrestal Tissue Attach­ment、図1) 歯肉縁下に補綴装置のマージンを設定する場合、骨補綴装置と歯周組織の接点 第2回:エビデンスに裏付けられた天然歯歯科審美修復縁上組織付着(生物学的幅径)を考慮することは避けられない(図1)。Kois10は、歯周組織と修復装置の調和のためには、「生物学的幅径という概念の理解とその臨床上でのマネージメントが鍵となる」と述べている。これまで、多くの研究者が、歯槽骨頂と骨縁上にある結合組織性付着、上皮性付着、歯肉溝の間に、一定の長さの関係があることを示してきた11-14。一般には、結合組織性付着の1mmと上皮性付着の1mmを合わせた歯肉溝底部から歯槽骨頂までの約2mmと定義づけられている13。 その場合、たとえ同一個体にあっても、それぞれの歯牙の骨縁上組織付着の長さは部位とは関係なくそれぞれ異なることを考慮しなければならない13、15。たとえば、隣接面の骨縁上組織付着は唇側面よりも長い16、17。この組織学的長さの違いは、隣接面のカントゥアと歯間乳頭の高さを支持する能力によるものである10。 もし、骨縁上組織付着を侵襲して補綴装置のマージンを設定してしまうと、その侵襲により炎症反応が惹起され15、付着の喪失が根尖方向に進行すると考えられている。歯周組織のPhenotype(辺縁歯槽骨の厚25QDT Vol.47/2022 February page 0167図1 骨縁上組織付着(生物学的幅径)。骨エナメル質歯肉溝歯肉溝上皮上皮性付着結合組織性付着セメント質

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