57第2回 すれ違い傾向の残存歯偏在症例に対する補綴設計(後編)QDT Vol.47/2022 February page 0199図1a~e 咬合支持は前歯部のみであったが、上顎はフレアアウトはせず、口蓋側歯頚部が露髄寸前まで咬耗していた。下顎前歯の歯槽骨吸収を認め動揺していた。楔状欠損(WSD)が多く認められ、かつての力の影響も疑われた。図2 初診時パノラマエックス線写真。顎角部の形から力が強い可能性も疑われたが、遊離端部の吸収や対合の挺出もすれ違いとしては軽症と思われた。abdceろ、残存歯はテンポラリークラウン同様に連結して補綴し右上欠損部にはインプラントにしてほしいと患者からの要望があった(図4、5)。1999年に奥様の上顎遊離端欠損部に2本のインプラントを植立していて、その経過が良好と勧められたとのことであった。奥様とは骨の状態が異なり、歯槽突起外側部の吸収が大きく、細いインプラントを傾斜埋入せざるを得ないこと、早期に脱落してしまう可能性が高いことなど説明したが、ぜひにとのことでこの設計を選択した(図6)。重度歯周炎に罹患していた₆₇は下顎遊離端欠損部には加圧因子bとなるため抜歯も検討したが口蓋根のみ保存した。メインテナンスには定期的に応じてくださり、毎回調子が良いとのことであったが、デンタルエックス線写真では早期にインプラント周囲骨の吸収を認めた。患者に食物の種類や噛みかたについての注意喚起をさせていただいたが、あまり効果がなかった。結果、約10年という短い期間で撤去に至った(図7~9)。患者からは「よく噛めてよかった」と、その後も良好な関係を保つことができたことがせめてもの救いと考えている。初診時
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