QDT 2022年4月号
8/9

 第3章での目標としては、基礎知識を確認しながら新たな視点を見つけてもらいたい。そこで前回は、ジルコニアカンチレバー接着ブリッジを再考するきっかけとして、ジルコニアカンチレバーの有用なポイントについて、歯科医師の視点と歯科技工士からの視点を挙げた。比較することで問題点を共有し、解決策を見いだしてほしかったからだ。 今回は、質の高いRBFDPsを製作するための医療チームとしての技術面の話だけではなく、審美はだれのものであり、だれが最終決定するものか、患者を取り巻く家族や友人に視野を広げてみる。さらに、ポジショニングスプリントの製作について、今まで解説していない視点から考察していく。今まで本連載で学んできた技術などを整理することも必要であるが、読者がRBFDPsに対する今までの考えを揺すぶることで、新たな視界が開けることを希望する。 前章まではインプットであったが、本章では歯科医師と歯科技工士がディスカッションし、アウトプットできる領域に達することを目的としている。また、今回から読み始めた読者にも理解できるよう、前回までで参照するべき回と内容を探しやすく提示していく。3-1-4 審美とはだれのためなのか、また、だれが最終決断するものなのかを実例を通し解く。 接着ブリッジの患者は95%以上、ラボを訪問する。目的の1つはシェードテイキングであるが、2つ目は患者の容姿を知り、治療に至るまでの話を聞くことである。筆者の患者は80%以上が若年者であり、ハンブルク市外から何時間も車や電車での移動を強いられる。よって、若年者の場合、親が一緒にラボを訪問する。 いきなり日本人歯科技工士の前で口を開け、歯の色を見られる行為は日常の行動とはかけ離れている。多くの若年者は長い矯正治療を終え、場合によっては歯肉の手術が終了した最終段階である。歯科医師とのコミュニケーションには慣れているはずであるが、思春期を迎えた女の子などは不安いっぱいの様子を見かけることもある。やはり、親が寄り添うことで若年者の患者はストレスを軽減できると考える。 クラスメートに前歯の見た目をはやし立てられて以来、笑顔が消え学校が嫌いになったという話を患者の親から何例も聞いている。勉強にも集中できず、友達もあまりできずに苦しんでいる子供たちを多く見てきた。子供の歯を治すことは、家族ぐるみの大イベントなのである(図1-1、1-2)。 歯科技工士は模型上の作業ではなく、そこには家族の願いが詰まっていることを特に意識していただきたい。歯科医師は、患者はもちろん、その親にも理解してもらう努力をするべきであり、担当の歯科技工士についても説明をしていただきたい。われわれが目標にしている15年後のRBFDPsが、成人した患者の口腔内でどのように機能しなければならないのか、また、RBFDPs カンチレバー接着ブリッジ成功のためのワンポイントアドバイスはじめに審美とはだれが決定するべきなのか98QDT Vol.47/2022 April page 0516図1-1 家族に笑顔が戻り、明るく弾んだ声が聞けた。矯正治療から始まり、4年の歳月をかけてジルコニアカンチレバー接着ブリッジが完成した。家族の協力なしには成し遂げていなかっただろう。図1-2 患者の笑顔。われわれはこの笑顔のためにつねに学んでいると考える。彼女も辛く暗い時期があったことを、のちに母親から知らされた。12Wer soll über Ästhetik entscheiden?■審美とはだれが決定するべきなのか

元のページ  ../index.html#8

このブックを見る