表1 細山先生症例の長期経過の中で生じた問題の因子(前号より再掲)。表2 各時代背景の理論に準ずる治療から生じた問題(表1の②をさらに分類したもの。前号の本文から再掲)。第5回 インプラント長期症例が示す臨床像を振り返って(中編)51QDT Vol.47/2022 May page 0603治療に対し、結果だけを見て「ああすれば良かったのに」などと言うことはだれにもできない。歯周病や、歯根破折にともなう外科処置があったにしろ、2021年の現在に至るまで「顎口腔機能を47年間維持し続けている」素晴らしい診療姿勢には感服するしかない。 このような思いを前提に、今、この患者さんを筆者的要因)から生じた問題の組織)から生じた問題 まず、前回の表1を再掲するが、おそらくは表2にあるような歯科医学の時代背景があり、今回の治療を手がけられた1973年当時のエビデンスの中では素晴らしい治療であったと推察する。 筆者は1977年に保母須弥也先生(日本顎咬合学会創立会長、日本歯科審美学会常任理事、日本補綴歯科学会理事など要職を歴任)に教えを請い、Thomas先生やStuart先生からナソロジーを学び、「なにが何でもセントリック」というコンセプトを実践していたが、リマウントするたびに些細な力加減や方向でセントリックが容易に変化する……中でも、顎関節に問題のある患者ほどそれが顕著になることを感じていた。当然、治療は難しくなり、咬合調整に時間を要するためチェアタイムのオフィスで治療すると仮定して治療の問題点と治療方針を考えてみたいと思う。細山先生の原稿にも、すでに考えられる答えが書かれているため、筆者からはオーストリアナソロジー的観点からの補足という立場で述べさせていただきたい。も半日、1日がかりというのがフルマウスの治療であったが、その予後は細山先生の症例と同じように新たな問題と対峙することが少なくなかった。そんなときに出会ったのがオーストリアナソロジーであり、矯正歯科治療の分野で著名な佐藤貞雄先生(神奈川歯科大学)であった。 筆者はそれまで、咬合器と機械論的な咬合運動の考え方で生体と向き合ってきたが、オーストリアナソロジーからは「生体も咬合も生涯を通じて変化し続けるものであり、環境(力)によって生体はコンペンセーション(適応)し形を変える」ことを学んだ。また、順次誘導咬合(シークエンシャルオクルージョン)の提唱者であるRudolf Slavicek先生からは咬合の生理とCMS第4回・細山先生症例に対する考察①治療的要因(力学的要因、生物学的要因、審美②各時代背景の理論に準ずる治療から生じた問題③オフィス・オーガナイゼーション(歯科医院④メインテナンス・システムから生じた問題a.1974年代は予防歯科医療の台頭でプラークコントロールが優先b.1979年代は力学的因子理論で、咬合治療が歯周治療の一翼となるc.1982年代は力と炎症のコントロールが回復治療の根幹d.1985年代はインプラント修復治療が確立e.2001年代は審美性重視の歯科治療が脚光
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