QDT 2022年6月号
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図1 患者の主訴は右側第一大臼歯の破折である。おそらく日常臨床でよく遭遇する一例であると思う。しかし丁寧に観察するとおびただしい咬耗、アブフラクション、骨隆起、左側の触診時に軽度のレシプロカルクリックを触れ、下顎の正中は左側に約1mmの偏位が認められる。歯科的既往歴を聞くと本図に書かれているようにブラキサーであり、喪失歯の原因にはオーバーロードが関わっているものと予測される。本稿では、ブラキサーにおける咬合崩壊をいかに考え、治療するかを筆者の症例を基にお示ししたい。前編(4月号)および中編(5月号)で示された知識を念頭に置いてお読みいただければオーバーロードに対する咬合治療の考えかたの概要がより理解できると思う。第6回 インプラント長期症例が示す臨床像を振り返って(後編)57QDT Vol.47/2022 June page 0755行いたい。ということで、初回の治療は患者(注:患者も歯科医師である)のクリニックにて欠損部位にインプラントを埋入し、1ヵ月後の下顎インプラントの上部のプロビジョナルレストレーションを想定した右側下顎第二小臼歯と第一大臼歯の支台歯形成と印象採得を経てフェイスボウ・トランスファーを行った。そして2回目からは、われわれ2人の居住地の中間地点で開業されている武井順治先生(神奈川県開業)のクリニックを提供していただいたことに感謝したい。 それでは以下に、本症例をアトラス形式で示していきたい(図1~45)。・年齢:57才・性別:男性・職業:歯科医師・主訴:右側第一大臼歯の破折。・歯科的既往歴:数年前まで欠損はなく、すべて有髄歯だった。昔は正中離開も現在ほどではなかったとのこと。上顎左側と下顎の右側第二大臼歯は歯冠破折で抜随。その後、歯冠補綴処置していたが、数年前に歯根破折で抜歯。本人はブラキシズムを自覚するも、咬合崩壊進行中・全身的既往歴:とくになし治療を始めるに際してのハードルの存在1)距離的問題 筆者の居住地と今回示す患者の居住地は日本を斜めに縦断する位置にあり、治療には飛行機と新幹線を乗り継ぐ必要がある。よって、日帰りは不可能で、治療の間隔はせいぜい月に1回程度となるため治療計画が重要となる。2)治療を行った場所について 治療にはインプラント、歯列矯正、CADIAX診断、セファロ分析、CTが必要なので設備の整った場所でケースプレゼンテーション本症例のポイント

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