QDT 2022年7月号
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はじめに:ジルコニア上部構造の破折リスクを軽減するためには1.パッシブフィット獲得のコツくいため、わずかに適合精度で問題が生じることがあり、その問題をどう解決するのかという点である。そこで、少しでも破折リスクを軽減できる補綴設計とするため、デジタルデータを有効活用し、インプラント上部構造にとってもっとも重要なパッシブフィットを獲得するための取り組みについてご紹介したい。1)印象精度 インプラント補綴における印象採得法として、光学印象か従来法の印象かは最重要ポイントではないが、精度の問題以外にも重合収縮、作業の煩雑さなどさまざまな面で光学印象が良いと考える1。 しかしインプラントにおける光学印象について、歯根膜のないインプラントブリッジでは天然歯にくらべて高い印象精度が要求されるうえ、スクリュー固定においてはセメントスペースによる誤差の補償が得られず2、解剖学的な基準点のない無歯顎、とくに下顎では光学印象において、インプラント間の距離と角度によってエラーが生じやすくなるとした報告もある3。山下貴史歯科医師・医療法人 榮貴会 山下歯科医院秋田県大仙市大曲黒瀬町3-45 インプラント上部構造のマテリアルとして、モノリシックのジルコニアが補綴強度、審美性の観点からも飛躍的に進化しつつある。しかし、ロングスパンのブリッジなどにおいては、インプラント上部構造にモノリシックのジルコニアを選択した場合、材料特性上、症例によっては破折などを経験された方も多いのではないかと思う。 また、口腔内スキャナー(intraoral scanner:IOS)やデザインソフトウェアなどの進化により口腔内、口腔周囲に関する情報のデジタル化が進み再現性が増したからこそ、上部構造破折リスク軽減のためにはプロビジョナルレストレーションの精度が重要となる。咬合再構成が必要な症例であればインプラント埋入前に顎位の改善を行い、インプラント埋入後も多角的な視点からのプロビジョナルレストレーションでの再評価、修正を要する。これらは治療計画段階からの密なラボコミュニケーションによって可能となる。 もうひとつ重要なのが、ジルコニアは焼結時の収縮が不可避であるという性質上パッシブフィットが得にQDT Original Articleロングスパンのボーンアンカードブリッジにおけるパッシブフィットの獲得~CAD/CAMによるVerification Indexの製作と3 on 1 Ti baseの臨床応用~

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