QDT Vol.47/2022 July page 0902ゴシックアーチでの咬合採得(咬座印象)完成・装着 近年、歯科治療におけるデジタル化の流れは刮目すべきものがある。とくにクラウン・ブリッジやインプラント治療などの固定性補綴装置におけるデジタル化への進化は目まぐるしく、日進月歩である。だが一方で、可撤性義歯補綴はどうであろうか。残念ながら、これといって大きな成果が出ていないのが実際ではないだろうか。 それでは、可撤性義歯補綴の分野において今後デジタル化は不可能なのであろうか? 著者の考えは「NO」である。近い未来、可撤性義歯補綴でもデジタル化による「革命」が起きるという確信をもっている。そこで本稿では、可撤性義歯補綴においてデジタルで現在行えることの中でも、とくに3Dプリンターを用いた3Dプリンティングデンチャーの製作方法とその評価について触れていきたい。作業工程について 当社は全部床義歯製作時にZERO SYSTEM®という独自の義歯製作システムを採用している。チェアサイドで特殊な手順を踏むため、少しではあるがここで概説したい。大まかな流れは、①概形印象採得、②ゴシックアーチ描記法(以下、GoA)を下顎概形印象用いた咬合採得(※この際、フェイスボウ・トランスファーや側方位および前方位のチェックバイト採得は行わない。あくまで、垂直的・水平的咬合採得のみを目的としている)、③仮床試適および精密印象、そして④完成・装着という流れで行っている(図1)。筆者の歯科技工所で行っている3Dプリンティングデンチャー製作も、この手順に則っている。印象採得について 現状、口腔内スキャナー(以下、IOS)を使用しての無歯顎粘膜面の印象採得は不可能ではないが、結果は安定していない(図2、3)。よって、やはり今後もアルジネート印象材を使用した概形印象が必要になる。 今後、IOSの性能や撮影精度の向上で粘膜面を読み取ることは可能になると思われるが、可動粘膜の印象が採得できず辺縁封鎖が難しいこと、IOSのチップを口腔内に挿入するため開口印象をしなければならず、機能時(閉口時)の印象採得が不可能という問題点も挙げられる。印象面は何を読み取るか? 現状、無歯顎の粘膜面をIOSで読み取ることがまだ現実的ではないことは上述した。つまり、ここから3Dプリンティングデンチャーを製作していくにあたって、何らかの方法で粘膜面を読み取る必要がある。現段階で考えられる方法としては、①仮床試適および精密印象図1 ZERO SYSTEM®の作業工程。50特別寄稿3Dプリンティングデンチャーが起こす義歯革命─「ZERO SYSTEMⓇ」と「cara Print 4.0」の臨床応用─はじめに3Dプリンティングデンチャーの製作工程神山大地 Daichi Kamiyama歯科技工士・医療法人社団佑健会 CRAFT ZERO千葉県船橋市芝山3丁目12-15特別寄稿
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