QDT 2022年7月号
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QDT Vol.47/2022 July page 090957て生活を行っていただき、付与した形態に対して違和感がないかなどを確認していただく必要がある。その確認を行うためのツールとなるのが、診断用ワックスアップの次に歯科技工士が歯科治療に携わるであろうプロビジョナルレストレーションの工程である。 プロビジョナルレストレーションは削合や添加が行いやすい材料で製作されているため、口腔内での調整が行いやすい。これがたとえば最終補綴装置と同じモノリシックなジルコニア等であれば調整などもしにくく、大きな修正が必要となったような場合には再製作となってしまう。これでは患者・歯科医院・ラボのすべてにおいて大きなデメリットとなる。逆にプロビジョナルレストレーションにより最終補綴装置の形態を口腔内にて模索し、最終補綴装置を製作するための基準や情報を得ることができれば、最終補綴装置製作 プロビジョナルレストレーションのひとつの役割は「暫間的な」修復装置としての機能である。しかし、プロビジョナルレストレーションという言葉はProvide「用意する。……を与える」という意味をもっており1、最終補綴装置に移行する前に最終補綴装置に与えようとしている形態が患者の口腔内で機能性・審美性などさまざまな観点から適応するかを観察・修正・再考察を行い、そこから得られた情報(形態)を最終補綴装置に反映していくための役割ももっている。この後者の役割が臨床上非常に有効で、ただ単純に暫間的な修復装置としての機能だけを与えるだけでは非常にもったいない。プロビジョナルレストレーションを有効に活用することで、最終補綴装置製作時のストレスや口腔内装着後のリスクを大きく軽減することができ、患者・歯科医師・歯科技工士のすべてにメリットがあるからである。 具体的に、審美的な観点からは、たとえば前歯部をの際は形態の付与に迷いがなくなり色調再現や細かなキャラクターの付与に集中することができる。また、チェアサイドではその形態が審美的・機能的に患者の口腔内で調和するかを実際に確認できる。これは診断用ワックスアップと同様に患者の治療への安心感にも繋がると考える。 そこで今回はプロビジョナルレストレーションについて基本的な考え方を紹介した上で、筆者が日々の臨床においてどのように考えてプロビジョナルレストレーションを製作しているのかについて、現在、あまりプロビジョナルレストレーションを臨床に取り入れていない、もしくは活用しきれていない方向けに紹介したい。前編となる今回は前歯部、後編では臼歯部を含む多数歯補綴の症例を例に挙げて紹介していく。製作する際に重要になる患者の顔貌・口唇に対する上顎前歯部の切端の位置を口腔内にて実際に評価することができる。その際に、患者の違和感の有無も実際に使用していただいた上で確認できる。また、歯周組織に対してどのような形態(豊隆)が調和するかの確認も行うことができる。 機能性の観点からは、前歯部では付与したアンテリアガイダンスを患者が許容できるのか、臼歯部では咬合の安定を考慮して付与した形態が調和するかなど、多くの項目の確認を行うことができる。 同時に、付与した形態が清掃性の観点からも問題がないかを確認することも重要となる。 このように実際に口腔内に装着し、修正を行いながら経過を観察し、患者の口腔内に調和する形態を模索するためのツールがプロビジョナルレストレーションである。プロビジョナルレストレーションを臨床に活用しよう!

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