37QDT Vol.47/2022 October page 1321唱されてから、フェルールがあることでクラウンと支台歯の機械的強度に加え、生存率と成功率も有意に向上すること2、3が報告されている。しかし小臼歯において、フェルールの存在下で有意に生存率・成功率が向上することがわかっているものの、前歯と大臼歯については臨床研究の不足により結論づけられていないのが現状である3。有限要素分析法の結果から、補綴装置や支台歯形成のデザインの違いにかかわらず、歯頚部にもっとも応力が集中する。その結果、もっとも フェルールが具備すべき要件には、高径、厚み、部位の3つが考えられる。 フェルール効果を適切に発揮するためには、その高径は必要不可欠である1、6。フェルールの高径が大きければ、より機械的強度が増すとの報告があり7、必要最小限のフェルール高径の数値を把握することは予知性の高い治療を行う上で重要である。 一般に、フェルールの高径は1.5〜2mmあれば十分な強度が得られる2、8、9。しかし、接着性レジンセメントを使用すれば、1mmで有効であるという報告6、7、10も数多くある。フェルールの高径が1mmで、補綴装置の装着にグラスアイオノマーセメント(以下、GIC)を使用した場合、60万回の咀嚼に耐えられず、フェルールが1mmで接着性レジンセメントを用いた強度と、フェルールが2mmでGICを用いた強度は、同程度であったと報告されている6。したがって、フェルールの高径は1.5〜2mm(最低でも1mm以上)必要であり、リスクが高い場合の補綴装置の装着には接着性レジンセメントを積極的に使用すべきと考えられる。第3回:エビデンスに裏付けられた天然歯歯科審美修復(その2)強度の低いセメント層が破壊され、ポストコアの動揺により周辺歯質にトルクが加わり、歯根破折が生じる。しかし、フェルールがあることでポストコアの種類に関係なく、負荷を軽減することが可能となる4。また、破折抵抗にフェルールの有無は関係ないが、破折パターンに関してはフェルールがあったほうがよく、フェルールのない歯の破折は修復不可能なことが多い5。 フェルールの厚みがあることで強度が増し、咬合圧負担時の負荷に耐えることが可能となる。破壊実験における破壊様相をみても、強度が弱ければフェルールごと破折するケースもあることから、フェルールにかかる負荷に耐えられる厚みが必須となる。Tjanらによれば、厚み1mm、2mm、3mmを比較検証したが、すべての群で統計的に有意な差はなかったため、フェルールの厚みは1mm以上が必要だと結論づけている11。しかし、厚み1mm未満の場合を比較検証した研究報告は存在しないなど、フェルールの厚みに関しての研究報告は少ないのが現状である12。 フェルールが支台歯全周に残存する場合は、一部残存する場合とくらべ、より効果を発揮する13-15。しかし実際は、う蝕や歯内療法、破折などの既往により、全周にわたるフェルールの獲得が困難な場合がほとんどである。前歯部において咬合力負荷に対抗する部位、すなわち上顎であれば口蓋側、下顎前歯部であれば唇側に十分なフェルールがあることは重要である16。1)高径2)厚み3)部位2.フェルールが具備すべき要件
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