QDT 2022年12月号
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13b24歯軸は顔面の正中線に対して傾きを認め、歯冠幅径/長径比は理想とされる75~85%1よりも大きかった。切縁の位置は下唇上縁と平行ではなかった。左右側切歯は歯冠形態、切縁の高さ、および歯肉縁形態が異なり、6前歯間の歯間乳頭の左右対称性および連続性も認められなかった(図1~3)。歯周組織はThin Gin­gival PhenoTypeであり、辺縁歯肉はロール状を呈し、炎症を認めた。 既存補綴装置を除去後、PVRを製作・装着し、プラークコントロールにより辺縁歯肉の炎症を消退させる。その後、PVRの歯肉縁下カントゥアの形態を利用第5回:エビデンスに裏付けられた天然歯歯科審美修復 多数歯修復について(その1)した補綴的方法によるGingival Frameworkを行うことにより、種々の問題点を解決して、補綴装置へと移行することを計画した。②治療過程a.補綴前処置:上唇小帯切離術 上唇小帯が高位まで付着しており、正中歯間乳頭および歯肉縁形態に影響を与えると考えられたため、上唇小帯をメスで切離し、繊維を除去した後、CO2レーザーで止血処置を行った(図5~7)。図1 初診時のスマイル時顔貌正面観。瞳孔線と前歯切縁平面は平行で、瞳孔線および前歯切縁平面と顔面の正中線は直交していた。図2 初診時スマイル口唇正面観。High Smileを呈していた。図3 初診時正面観。切縁平面と正中線は直交しているが左右中切歯の歯軸は傾いていた。図4 初診時デンタルエックス線写真。図5 辺縁歯肉の炎症が消退後、プロビジョナルレストレーション(PVR)を装着した正面観。図6 高位付着した上唇小帯、および上顎前歯側面観。図7 上唇小帯切離、止血後の正面観。症例:初診時症例:上唇小帯切離術QDT Vol.47/2022 December page 157341

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