QDT 2022年12月号
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QDT Vol.47/2022 December page 1593歯科技工士がセットアップ模型製作を依頼された場合の対応図1a、b 天然歯列の矯正歯科治療の術前(a)・術後(b)。天然歯、あるいは補綴予定歯が少ない口腔内においては、矯正医はセットアップ模型でゴールを具現化しなくても矯正学的な診断から治療後のゴールをイメージしやすい。ab61天然歯、あるいは補綴予定歯が少ない口腔内においては矯正歯科治療のゴールをイメージしやすい 長期的に予知性の高い歯科治療を行う上では歯のポジションが重要であり、それを改善するために矯正歯科治療が選択される場合がある。 矯正歯科治療を行う上で、天然歯、あるいは補綴予定歯が少ない口腔内においては、矯正医は明確なゴールのイメージをもっている場合が多い(図1)。しかし、多数の補綴予定歯や欠損が存在するケースにおいては、補綴治療結果を組み込んだセットアップ模型を矯正歯科治療前に製作しなければ治療のゴールを見据えることが困難になってくる。また、欠損のあるケースでインプラント治療が計画されている場合は、固定源の確保や早期の咬合支持の獲得のために、矯正歯科治療前にインプラントを埋入する場合も多い。こういった場合は、矯正歯科治療後の歯の位置を考慮してインプラントポジションを決定しなければならず、セットアップ模型が必要になる。 セットアップ模型は矯正医が製作することが基本である。しかし、こういった場合は補綴装置を製作する歯科技工士が診断用ワックスアップと同時にセットアップ模型の製作を依頼されることも少なくないのが現状である。 セットアップ模型を製作する際は、歯列模型を1歯1歯分割し、ワックスの土台を用いて位置を変更していく。この際、当然、歯科技工士が勝手に歯の位置を決めるのではなく、矯正医の指示の下、その考えを具現化していく。しかし、指示を受けて実際にセットアップ模型を製作する際に、歯科技工士が矯正歯科治療における基本的な歯の動き方や移動量を把握しているかどうか、またセットアップ模型を製作する際に押さえておくべき項目を理解しているかどうかで、歯科医師-歯科技工士間のコミュニケーションの質、および製作されるセットアップ模型の質は大きく変わってくる。また、その上でわれわれ歯科技工士がセットアップ模型の製作を依頼される場合は、ときに補綴装置製作のプロとしての視点から矯正医に提案することも求められていると考えているが、これも上記の基本的な矯正歯科治療に対する知識がなければ現実的な提案を行うことは難しくなる。 本稿ではそのような視点から、セットアップ模型を製作する際に歯科技工士が知っておきたい知識を紹介していきたい。はじめに

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