QDT Vol.48/2023 January page 0081ス後の歯根吸収、左側側切歯はアンキローシス様のエックス線像を認めた。 インプラント治療による前歯部補綴修復は、患者の年齢から骨成長およびクラニオフェイシャルリモデリングを考慮すると、25歳以降(できれば30歳以降)に先送りすることが望ましいと判断した。患者は、MLDの改善のための全顎的矯正治療を希望しなかった。左側側切歯の予後不良を同意の上、暫間補綴装置の意味合いを含めた固定性架橋義歯(FDP)の装着を計画した。仮に左側側切歯に問題が生じた場合でも、すぐにインプラント治療に移行できるように、左側中切歯抜歯後にGBRによる歯槽堤再建術を計画した。支台歯である右側中切歯と左側側切歯の感染根管治療の後、支台築造を行い、PVRを製作・装着する。前歯切縁平面および歯肉縁の位置を瞳孔線とできるだけ平行にするべく、右側前歯では外科的歯冠長延長術(SCL)と切縁削除および歯冠形態修正、左側前歯では結合組織移植(CTG)による欠損顎堤再建と根面被覆を行う。その第6回:エビデンスに裏付けられた天然歯歯科審美修復 多数歯修復について(その2)後、補綴的方法によるGingival Frameworkを行うことにより、問題点を解決して、補綴装置へと移行することとした。②治療過程a.補綴前処置1:左側中切歯抜歯、およびGBR 歯根吸収を起こしている中切歯を抜歯し(図5)、4ヵ月後に自家骨、骨補填材、チタンメッシュ、および吸収性膜を使用してGBRを行った(図6~9)。b.補綴前処置2:右側前歯での外科的歯冠長延長術(SCL)と切縁削除および歯冠形態修正、左側前歯での結合組織移植(CTG)による欠損顎堤再建術と根面被覆 GBRから8ヵ月後、PVR装着時の状態を診断し、上顎前歯の切縁平面、歯肉縁の位置、歯冠形態の改善方法を考慮した治療計画を再考した。その結果、初診時と同様に、瞳孔線と前歯切縁平面は平行ではなく、左上がりの状態であった。それに加えて、左右中切歯81症例1:初診時図1 初診時スマイル顔貌正面観。瞳孔線と前歯切縁平面は平行ではなく、瞳孔線と顔面正中は直交していた。スマイルは、High Smileを呈しており、歯肉が広範囲に露出していた。図4 初診時デンタルエックス線写真。左側中切歯は歯根吸収を、側切歯は歯根膜腔の消失を認めた。図2 初診時正面観。前歯での歯肉縁の位置は、前歯切縁平面と同じく左上がりであった。とくに左右犬歯で歯肉縁と歯冠長が著しく異なっていた。図3 初診時切縁観。
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