3演者論202hsalpsnU no mortsoM nylevE yb otohP文QDT Vol.48/2023 January page 0104私の分岐点:この症例104─歯科医師人生に訪れた転機を症例とともに振り返る─鈴木宏樹Hiroki Suzuki歯科医師・篠栗病院 福岡県糟屋郡篠栗町尾仲94第1回 義歯治療のありかたについて考えさせられた症例はじめにリレー連載 筆者は2003年に歯科医師となり、博多駅(福岡県)前の歯科医院での約7年間の勤務を経て、2010年から2023年の現在まで病院歯科に勤務している。 博多駅前での診療は40〜60歳代の患者がメインで、う蝕や歯周病、審美的な問題を主訴として来院される方が多く、多数歯欠損の患者は滅多におらず、少数歯欠損に対してはインプラントやブリッジを用いた治療を行っていたため、義歯治療を行う機会はほとんどなかった。 歯科医師としての知識や経験が浅かった私は、スタディグループの「筒井塾」(筒井昌秀先生〔故人〕/筒井照子先生主宰)や「上田塾」(上田秀朗先生主宰)などに通い、1本の歯を守ることから全顎的な治療まで、たくさんのことを学ばせていただいた。また、その過程で知り合った白石和仁先生(福岡県開業)には、主宰される「白石組」に入れていただき、今もペリオに限らずさまざまなことを習い続けている。 2010年、33歳で今の病院歯科での勤務を開始したが、そこで状況は一変した。それまでとは打って変わり、病院歯科では70〜90歳代の患者がメインとなり、臨床では多数歯欠損や無歯顎への義歯治療に追われる毎日となった。当然、患者の主訴も「義歯が合わない」「義歯が痛い」「食べられない」などが多くなったが、それまで義歯と縁がなかった私が、患者が満足する義歯な私の分岐点:この症例
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