3演者論202文QDT Vol.48/2023 January page 0115115橋中知之Tottori Dental Technology鳥取県鳥取市松並町2-435-16 補綴治療を受ける多くの患者は整然と並んだ左右対称の排列と歯冠形態を好み、術者は実際にそのような歯列を目標に歯列を形成する。また多数歯補綴症例や咬合再構成の症例では、規則的な形態・排列に製作した方が機能回復も行いやすい(図1)。 しかし、すべての患者に矯正歯科治療や外科処置などを含む術者の理想的な治療を受け入れてもらえるわけではない。口腔内環境により、左右対称にできない症例に対しては自然感のある非対称な形態や乱排列にすることがひとつの対策となる。また、左右対称にできる症例であっても、個性的で自然な笑顔を目標とする症例に対しては、あえて左右対称を崩したり、乱排列を用いたりする場合もある。天然歯列は必ずしも左右対称な形態や排列ではないため、補綴装置も非対称な形態や乱排列に製作した方がむしろ自然な歯列となるはずである(図2)。 しかし、顔貌や口唇、患者の希望などを考慮することなく術者が自分勝手に排列を乱しても、患者がそれを受け入れてくれることは稀である。本稿では乱排列を行うにあたり必要となる基本的な形態・排列の捉え方と、製作の要点を解説したい。Feature article #2前編:天然歯形態・排列の基本的な考え方はじめに自然な歯列を再現するための乱排列
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