67QDT Vol.48/2023 February page 0237法とされている2。SCLの主な目的は、①補綴的条件の改善(フェルールの獲得、歯冠長の獲得)、②審美的条件の改善(歯冠長幅比、歯肉縁の位置、歯肉露出量の改善)、そして③STAの改善、が考えられる。 SCLの術式は、まず歯肉縁をどの程度根尖側に設定するのかを決め、次に歯肉縁の移動量に対して歯肉と歯槽骨をどのように扱うかによって決定される。①角化歯肉の幅 歯肉の取り扱いは、角化歯肉の幅を基準に考える。天然歯の周囲には少なくとも2mm以上の角化歯肉が必要とされている4、5。しかし、角化歯肉が2mmであっても歯肉溝が2mmであれば、結果として付着歯肉は0mmということもありうる。歯肉縁下に補綴装置のマージンを設定して補綴歯科治療を行う歯に対しては、補綴歯科治療後の炎症の範囲・付着の喪失・退縮などを考慮すると十分な幅の角化歯肉が必要であり6、7、具体的に5mm以上の角化歯肉が必要であることが示唆されている8。しかし、臨床的には2mmでは足りず、5mm以上は現実的には難しいため、3mm以上の角化歯肉があることが基準となる9。②歯槽骨切除 歯槽骨の取り扱いにおいては、STAの獲得に配慮しなければならない。これまでに、STAに歯肉溝を加えたその幅は2.73mm10、2.26±0.13mm11、3.63±0.64mm12などの報告があるが、臨床的には約3mmとされている。歯槽骨頂がSCLにより予定している歯肉縁の位置から3mm未満に位置する場合は、3mmの幅を確保するように歯槽骨切除を行う13、14。しかし、STAには個人差があるため、術前にボーンサウンディングにより骨頂の位置を確認し、術中の歯槽骨切除量の参考にする15。第7回:エビデンスに裏付けられた天然歯歯科審美修復 外科的歯冠長延長術(その1)2)SCLの術式選択3③術式の選択 術式の選択(歯肉切除あるいは歯肉溝切開か、歯槽骨切除が必要か否か)には、術後の歯肉縁の位置の設定が必要となる。術前および術中に、設定された歯肉縁の位置の明確な基準となるのは、サージカルステント(以下、ステント)である。ステントを装着した状態での、ステントの歯肉縁から根尖側の角化歯肉の幅により、歯肉切除を行うかどうかが決定される。SCL後に3mm以上の角化歯肉を残せる場合は、歯肉切除後に全層弁でのフラップを形成する(剥離はMGJの手前までに留めることにより、フラップは同じ位置に復位される)。しかし、3mm以上の角化歯肉を残すことができない場合は、角化歯肉幅の減少を防止するために歯肉溝切開を行い、部分層弁のフラップを形成する(剥離はMGJを超えて、フラップを根尖側に移動する)。隣接面に関しては、歯冠長延長の必要がなければ軟組織を温存しておく。 次に、ステントの歯肉縁から歯槽骨頂までの距離を計測する。術後のSTAを考慮して、その距離が3mm(術前のSTAの幅を参考に)となるように骨切除を行う。歯槽骨辺縁が厚いと、術後に辺縁歯肉のリバウンドが起こりやすくなるため、繊細な骨整形が必要となる。 十分な角化歯肉幅が存在する場合は少なく(ガミースマイルを除く)、ほとんどの症例で歯肉溝切開後、部分層弁での剥離と根尖側へのフラップの移動が必要となる。また、術直後の審美的配慮と術後の辺縁歯肉の歯冠側方向へのリバウンドを避けるために、フラップの断端をサージカルステントの歯頚部に位置づける。つまり、フラップの断端を骨頂から3mm歯冠側に位置づけるには、骨膜縫合を行うための角化歯肉幅が5mm程度は必要になる(骨頂付近の骨膜は骨外科のために切除してしまうため)。その結果、歯肉切除を行わず、歯肉溝切開から部分層弁を形成する術式を選択する場合が多くなる。
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