QDT 2023年5月号
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 MI(Minimal Intervention)への意識が医療者側にも患者側にも浸透した現在では、う蝕管理以外の領域にもその概念が浸透し、歯科臨床のほとんどの分野で考慮すべきキーワードとなっている。そのような中、補綴処置においても低侵襲なラミネートベニアやテーブルトップベニア(オクルーザルべニア)、サンドイッチベニアといった方法が報告されるようになり、それらに対応するプロビジョナルレストレーションやモックアップの製作法など、種々のアプローチが紹介されている。また、う蝕症が減少する一方で酸蝕や咬耗などのtooth wearによる歯質欠損が注目されており、咬合高径低下症例に対する治療が必要となる。 クラウン・ブリッジで咬合高径の低下を改善する場合、設定する新たな咬合に適応できるかという不安が付きまとう。歯列の欠損が少ない場合は、本来の咬合高径、もともとの顎間関係に戻すのだから問題ないと考えたいが、外傷で一瞬にして変わってしまった場合を除けば、その多くが長年かけて今の口腔内状態に至っていることから、現状にある程度適応していることになる。その口腔内環境を一気に変えることは、「もとに戻ってうれしい」ことばかりではなく、「何かしっくりこない」と感じられることも想定する必要がある。咬合に違和感を抱いたまま、さまよえる患者1、2となってしまうことは歯科的な介入によるワースト・ケース・オブ・シナリオ(最悪の結果)である。そこで、可逆的にクラウン・ブリッジの治療ができればこういったリスクを回避できるのではないか、との発想でこれまでもいくつかのアプローチを行ってきた3、4。Feature article #124QDT Vol.48/2023 May page 0628はじめに─必要性を認めるまでは可及的に支台歯を削らないためのアプローチ─藤澤政紀 Masanori Fujisawa歯科医師・明海大学歯学部機能保存回復学講座 クラウンブリッジ補綴学分野埼玉県坂戸市けやき台1-1前歯部補綴治療の守備範囲を広げる の提案プロビジョナルレストレーション」「ラップアラウンド・

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