図1に「すり減った歯を治したい」との主訴で、かかりつけの歯科医師から紹介を受けた77歳男性の初診時口腔内写真を示す。大臼歯に欠損があり咬合支持域■初診時の口腔内写真g図1a〜g 対合関係のあるすべての歯に著しい咬耗が認められる(a、f、g)。偏心運動時も咬耗部に一致したガイドに沿った運動をとる(咬頭嵌合位432112345そのひとつが接着性スプリントである。既存の修復装置を除去することなく、また歯質を切削することなくレジンオーバーレイを仮着し、この状態でクラウン・ブリッジ修復に移行できることを確認することが最大の利点である。同様に咬合挙上を必要とするケースにもこの接着性スプリントは有用である。 このような背景を踏まえ、本稿では前歯部プロビジョナルレストレーションのひとつとしての「ラップアラウンド・プロビジョナルレストレーション」について紹介する。本法は、前歯部の歯冠長の回復や歯冠形態の変更が必要となる症例に対し、形成することな症例1前歯部補綴治療の守備範囲を広げる「ラップアラウンド・プロビジョナルレストレーション」の提案く歯の唇面と舌面を包み込む(wrap around)形態のプロビジョナルレストレーションを装着するものである。術者は本装置の装着中の経過を追うことにより、治療計画の確認や見直しができ、また患者サイドとしては、自らが望む審美や機能回復のイメージをつかむことにより、提示される治療計画に対して家族や知人に相談することもできる。こうしたメリットを、歯の切削なしで得られることが、本法の大きな利点である。本稿では前歯部補綴治療の守備範囲を広げる可逆的アプローチとしての応用を紹介する。は2ヵ所であるが、咬耗の結果、対合関係のある全歯432112345)で咬頭嵌合位での咬合接触が認めら(432112345れた。歯周組織に大きな問題はなかった(図2)。ブラキシズムの自覚、家族からの就寝中の歯ぎしり音の指摘を尋ねたが、いずれも「そのようなことはない」との432112345〔b、c〕、右側方滑走時432432〔d〕、左側方滑走時23452345〔e〕)。abcdef25QDT Vol.48/2023 May page 06291.接着性スプリントからサンドイッチ・プロビジョナルレストレーションへ◎症例1
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