ポラリーアバットメント)を固定する。パターンレジン硬化後、フローの良いシリコーン印象材を流出孔から流し込んで印象を採得する。従来法との大きな違いは、先にトレーと印象用コーピングを固定することである。先に固定しておくことでシリコーンの硬化を待つ間に保持する必要がなくなる。保持する必要がないためシリコーンが硬化中に動くことがなく変形しない。また、先に固定していることでインプラントの位置関係も信頼性があり、固定されたトレーにシリコーン印象材を後で流し込むのでインプラントと歯肉の位置関係も信頼できるものになっている。 ポジショニングトレー法は歯科医師とのやり取りで生まれたアイディアである。初めは、ベリフィケーションインデックスのジグをメタルではなくトレーレジンで製作していたことから始まる。これは弊社にメタルを鋳造する機械がなかったからである。ある時、歯科医師がベリフィケーションインデックスと同時にシリコーン印象材で歯肉の情報を採得してきたことがあった。筆者はここからヒントを得て、まず通常のトレーレジンでポジショニングトレーのプロトタイプを図1a 初期のポジショニングトレー。シリコーン印象材が細部まで流れているのかが確認できない。図2 初期のポジショニングトレー。図3 現行のポジショニングトレー。図1b 透明なトレーレジンで製作したポジショニングトレー。内部を確認しながら注入できるが、辺縁封鎖ができていないため余剰シリコーンが溢れ出ている。図1c 現行のポジショニングトレー。辺縁封鎖がしっかりできており、口蓋部分はストッパーになっている。さらに均一にシリコーン印象材を注入できている。2393インプラントの位置情報と歯肉情報を同時かつ正確に採得するためのチャレンジQDT Vol.48/2023 May page 0697製作した。しかしシリコーン印象材を流す際に内部でどこまで流れているのかが分かりにくいという問題があった(図1a)。そこで今度は透明なトレーレジンを使用したところ、内部が見やすくなり精度と作業効率が向上した(図1b)。 さらに取引先の歯科医師から、シリコーン印象材を注入する際にトレーと歯肉の間からシリコーンが漏れて圧がかからないと聞き、辺縁は封鎖しなければいけないと気づいた。試行錯誤したが、従来のアナログな製作方法では辺縁を封鎖するのが大変で、非常に時間のかかる作業になってしまった。そこで3Dプリンターを使用してポジショニングトレーのプロトタイプを製作し(Formlabsサージカルガイドレジンを使用)、何度もテストと改良を加えたことで現在の形になった(図1c)。3Dプリンターで造形したポジショニングトレーは十分な透明感があり、均一なスペースの確保、そして辺縁封鎖、シリコーン印象材の注入孔の大きさ、どれをとってもアナログで製作したものよりはるかに精度の高いものが完成した(図2、3)。ポジショニングトレーの変遷
元のページ ../index.html#8