「条件の良い環境」とは、・支台歯の変色が少ない・十分なクリアランスが確保されている・マージンが露出していないケースと考える。こういった条件であれば、目標歯に関係なくジルコニアとプレスセラミックスのどちらをフレームとして使用しても良好な結果が期待できる。 歯科医師からの指定がない場合、色調を含めた条件を見て自分が製作しやすい方を選択して問題ないが、筆者の場合、最近はジルコニアフレームを使用することを最初に検討している。これはやはりプレスセラミックスは製作に手間がかかるためで、現在の筆者のラボの運営上、なるべくCAD/CAMシステムを活用して製作したいという意向があるからである。79QDT Vol.48/2023 June page 0809 患者は50代男性。1に装着されていた旧補綴装置の審美改善を主訴に来院された。喫煙者だが今後禁煙する意思はなく、残存歯の色調に合わせて欲しいという希望があったため、着色をエクスターナルステインにて表現することとした。支台歯の歯頚部に若干の変色はあるものの、十分なクリアランスが確保できており、歯肉縁下マージンである。本症例はプレスセラミックス(ヴィンテージLDプレスMT-A3にヴィンテージLD〔ともに松風〕を築盛)で補綴治療を行った。 患者は50代女性。ホワイトニングを希望して来院されたが、21の失活があったため先に根管治療を行い、その後にホワイトニングを行った。ホワイトニング終了後、21の補綴治療を行った。支台歯の変色もなく、十分なクリアランスが確保されており、歯肉縁下マージンである。本症例はジルコニアセラミックス(松風ディスクZR ルーセントスープラA1、ヴィンテージZR、ヴィンテージ アート ユニバーサル〔すべて松風〕)で補綴治療を行った。制約のある環境下での前歯部補綴に対するマテリアル選択と対処図1 図で挙げたような「条件の良い環境」であれば、自分が製作しやすいマテリアルを選択しても良好な結果を得やすい。Sample Case 1Sample Case 2「条件の良い環境」においては、どちらのマテリアルをフレームとして選択しても問題ないた。筆者の臨床においても対合関係などから強度が必要な場合はモノリシックで製作する場合もある。しかし、現状においては陶材を築盛したほうがモノリシックよりも自然な表現が可能であると考えているため、前歯部審美領域における筆者の臨床においては、モノリシックでなければ問題が起こるケースや歯科医師からの指示がない限り、レイヤリングクラウンが第一選択となっている。その考えは筆者に仕事を依頼する歯科医師も同様であり、実際にレイヤリングクラウンを指定して補綴装置製作を依頼されることがほとんどである。そのため本稿においては、モノリシックタイプではなくレイヤリングタイプの補綴装置におけるフレームマテリアルでの使用用途のみについて言及していく。
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