3演者論202文QDT Vol.48/2023 August page 105864 現在の歯科技工業界はデジタル化が急速に進み、以前のように手作業で時間がかかっていた時代からCAD/CAMシステムを活用して効率化を意識する時代になってきている。 歯科技工業界の抱える大きな問題として、志願者の減少、そして、せっかく歯科技工士になったとしても労働条件に耐えきれずに歯科技工士という職業自体を辞めてしまう割合が多いことが挙げられる。20代の若い歯科技工士の数は全体の9.1%まで減少し、過半数が50代以上で、平均年齢は49.3歳と高齢化が進んでいる1。 筆者のラボでも、以前から思うように若いスタッフが定着せず、結果、技術の継承ができずに後進育成の難しさに悩んでいた。若いスタッフが辞めてしまう理由には、会社の体制や教える側の問題もあると感じている。技術的な経験は積んでいるが、「人に伝え、教える」という教育の分野を学ぶ機会も時間もないまま教える立場になってしまい、このままではスタッフをうまく育てることができないと痛感した。 そんななか、ラボの効率化を考えて2013年にCAD/CAMシステムをラボに導入したが、当時の加工機のレベルでは、マージンは厚く表面は鱗状であったため加工後に手を加える範囲が多かった。そのため、CAD/CAMシステムを効率よく機能させるためにはスタッフ間の連携が必要と感じ、より会社の組織化・システム化が問われると感じていた。 加えて、働き方改革関連法が施行されたことで、歯科技工士の就労環境も改善が求められ、仕事内容を見直さなければならない時期だと一層感じるようになった。このような「人材不足」「効率の悪い働き方」「教育と育成」という問題を、デジタルを活用して労働生産性を向上させることで改善できるのではと考えた。技術的な要素が多い歯科技工士の仕事だからこそ、デジタルとアナログを使い分けて「効率化とクオリティの両立」を目指してきた考え方や取り組みが一定の成果を得たので、今回はそれをお伝えしたいと思う。枝川智之/熊木康雄パシャデンタルラボラトリー千葉県流山市南流山1-19-7はじめに前編:社内コミュニケーション強化に基づくスタッフ教育の試みFeature article #2DXを意識した労働生産性の向上と人材育成の両立
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