31QDT Vol.48/2023 November page 1423 以上より、適応症や隣在歯の状態など、さまざまな条件を考慮する必要があり、現在までに報告されている範囲では、1歯の中間欠損の治療においてすべての条件でインプラントがブリッジより有効であるというエビデンスは存在していないので注意が必要である。合併症から考慮すると、インプラントのほうが発生率 インプラント支持型クラウンにおいては、5年および10年の追跡調査ではそれぞれ、高い生存率(94.5%2-4、95.1%5、96.3%6および89.4%4、6)が認められた。また、インプラント支持型ブリッジでも5年および10年の追跡調査ではそれぞれ、同じく高い生存率(95.2%2、4および86.7%4)が報告されている。オールセラミックを使用したインプラント支持型クラウンでも高い生存率を示し、インプラント支持型クラウンの5年後生存率は93.0%7、96.3%8(ジルコニアセラミッククラウン)、10年後生存率は94.4%7であった(ここでの「生存」とは前装部の破折の修理あるいは脱離したインプラント支持型クラウンの再接着といった治療的介入があったにせよ、経過の調査を行った時点で補綴装置が口腔内に存在していることと定義している)。 合併症は、前装材料の破損やスクリューの緩みなどの技術的合併症が多く認められ2、インプラント支持型ブリッジでは38.7%と、他の治療法にくらべると高くなっていた。5年間の観察期間にインプラント周囲炎が9.7%、2mm以上の骨吸収が6.3%、インプラントの破折が0.14%、スクリューの緩みが12.7%、スクリューの破折が0.35%、前装材料の破損が4.5%に認め第16回:エビデンスに基づいた欠損修復処置(インプラント支持型クラウン)は高いものの、耐久性においては、5年生存率は両者に大きな差は認められない。しかし、それより長期の観察によると、ブリッジの生物学的合併症の発生頻度が高くなるためか、インプラントの生存率が高い報告が多い1。られた3。 システマティックレビューによると、インプラント支持型オールセラミッククラウンにおける5年後/10年後の技術的合併症発生率は、チッピング9.0%/2.7%、フレームワーク破折1.9%/1.2%(95%CI:1%〜1.5%)、スクリューの緩み3.6%/5.2%、5年後の脱落1.1%であった7。生物学的合併症については、5年後の累積軟組織合併症発生率が7.1%、骨欠損が2mmを超えたインプラント周囲炎の累積合併症発生率が5.2%であった。技術的合併症の累積発生率は、5年後にスクリューの緩みで8.8%、保持力の喪失で4.1%、前装材料の破折で3.5%に達した。5年間の累積審美的合併症率は7.1%であった6。 Grunderらはインプラントに対して少なくとも2.0mmの唇側骨組織があること8を推奨し、Linkevičiusらはインプラントとアバットメントの界面に対して2.0〜3.0mmの垂直的な組織の厚さ、またはインプラントの埋入深度があること9を推奨している。 理想的なインプラントの埋入位置は、歯肉縁から3.0〜4.0mm先端側、最終補綴装置の頬舌側位置を二等分する線に対して、やや口蓋側で顎堤頂がある位置、および隣接歯から1.5mm以上離した位置である10。2.インプラント支持型クラウン1)生存率2)合併症3)理想的なインプラントの埋入位置
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