QDT Vol.48/2023 December page 151319ようになりました。たとえば、1年生と3年生と5年生が9:00から、2年生と4年生と6年生が9:30からといった状況です。オンライン授業も、最初はリアルタイムではなく、教員が授業や実習を録画しておき、それを学生たちが後から見るかたちでした。私はクラウン・ブリッジの所属ですので、学生に支台歯形成の動画を提供し、それに対してレポートを書いていただいたり、歯種を指定してのスケッチや歯形彫刻を提出していただいたり、といった授業を行いました。 そして研究については、私は臨床研究を主に行っていますので、患者さんが来られないという以外に大きな問題はなかったのですが、バイオロジー系の研究者には影響が多かったようです。 最初の緊急事態宣言は2020年4月7日から5月14日までと期間が長く、感染を恐れて患者さんが来院されない日も多くありました。こうした中、医療機関の受診が困難になりつつあることに鑑みた時限的・特例的な対応として、「歯科診療における新型コロナウイルス感染拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて」(令和2年4月24日厚生労働省医政局歯科保健課、医薬・生活衛生局総務課事務連絡3)が取りまとめられたことを耳にして、われわれもオンライン診療や教育に取り組んでみようと思い立ちました。 まずは、学生教育のためのトライアル研究として、学生が模型上で行った支台歯形成をオンライン上で評価できるのか、という研究を行いまして4、その後に、補綴領域のオンライン診療で何が有用かと考えて、義歯診療における歯科技工士立ち会いへの応用というアイディアに至りました5。鈴木:大学が、研究・臨床・教育のすべてをオンライン化せざるを得ない状況に追い込まれたわけですね。そして、教育のオンライン化から着手したところ、それが臨床にも役立たないかと考えられて、歯科技工士のオンライン立ち会いに行き着いたということですね。長谷:この発想は、髙江洲先生が有床義歯の教室におられたとしたらむしろ生まれてこなかったと思うので義歯製作時におけるオンライン立ち会いの可能性(後編・実践編)すが、いかがでしょうか。もともと、歯科技工士に何を確認してほしかったのでしょうか。あるいは、ただ単にオンラインで何かできるかを試してみたかったということでしょうか?髙江洲:ご指摘のとおり私はクラウン・ブリッジの症例を手掛けることがほとんどなのですが、たまたま上下顎総義歯を再製される患者さんを担当したときに、「これは今、オンラインで歯科技工士に立ち会ってほしい」と思ったのがきっかけですね。鈴木:いわゆるコロナ禍の前にも、総義歯の症例では歯科技工士の立ち会いを依頼されていたのでしょうか。髙江洲:院内の技工室がありますので、そこにいる歯科技工士に依頼したことはあります。とくに審美への要求が強い患者さんの場合です。鈴木:コロナ禍の中では、チェアサイドに来ていただく歯科技工士も重装備になりますから、たとえ院内といえどもオンラインが便利ということになりますよね。その一方で、長谷先生と古賀先生は、先月号にもあったとおり距離的な問題を解決することが大きな目的だったと。長谷:私の場合、とくに地方都市で開業していますので、先月号で申しましたように歯科技工所の数がそもそも少ないです。そして、それぞれの歯科技工所が仕事をかなり抱えている状態なので、とても立ち会いをお願いできる状況ではないことがまず挙げられます。また、私が自費の技工をお願いしている歯科技工所
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