QDT 2023年12月号
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QDT Vol.48/2023 December page 152935第17回(最終回):エビデンスに基づいた欠損補綴処置(インプラント支持型クラウンおよびブリッジ)辺縁歯肉縁から歯肉溝までの約1.4mm:プラーク領域(不潔域)インプラントプラットフォームまでの付着領域:清潔域図1 インプラント周囲組織は、辺縁歯肉縁から歯肉溝に存在する幅約1.4mmのプラーク領域(不潔域)とそこからインプラントプラットフォームまでの付着領域(清潔域)に分けられる。上皮付着と結合組織付着:不潔域と清潔域①金合金 金合金製のアバットメントを装着した場合、インプラント周囲組織とアバットメントレベルに適切なアタッチメントは形成されず、軟組織の退縮と歯槽骨頂の吸収が起こることが示されている2、3。また、多核細胞やマクロファージがより頻繁に観察され、接合上皮の外側の結合組織部分には、一貫して炎症性細胞が浸潤していたとの報告がある2。②チタン これまでもっとも信頼性の高い材料とみなされてきたのがチタンである。上皮接着性および上皮封鎖性が高いマテリアルとして認識されている4。③ジルコニア ジルコニアを選択する理由は、その構造、細菌の非付着性、軟組織細胞の接着性、研磨性が挙げられる。ジルコニアは不活性で構造的に安定した材料であり、強固な構造であるため腐食の影響を受けにくく、生体適合性に優れている。その研磨性は高く粗さ0.054μmまで滑らかに研磨が可能である5。現在、歯肉縁下の修復に最適なマテリアルのひとつと考えられている。④二ケイ酸リチウム 二ケイ酸リチウムは生物学的に不活性ではなく、細胞毒性が高いことが示唆されている6、7。しかし、研磨された二ケイ酸リチウムに対して、線維芽細胞が良好に付着することが示されている8。二ケイ酸リチウムの仕上げ手順は、研磨あるいはグレージングが考えられる。グレーズ材は、長石系セラミックの一種であり、後述するように軟組織の付着を維持できず、歯肉退縮や骨吸収を引き起こす可能性があり、それは生体適合性が低下することを意味している。しかし、グレージング後に再研磨すると、より緻密な二ケイ酸リチウムが露出し、生体適合性が向上する可能性があることも示唆されている1。⑤長石系ベニアリング(築盛用)陶材 長石系ベニアリング(築盛用)陶材の場合も、金合金と同じく軟組織の退縮と歯槽骨頂の吸収が起こることが示されており2、長石系ベニアリング陶材の表面粗さがこの原因となる可能性が示唆されている1。しかしこれらを示す研究では、仕上げ手順はグレーズが前提であり、グレージング後に研磨したものについてはその記述がない。研磨された長石系ベニアセラミックの生体適合性に対しては、未だ不明であるのが現状のようである。⑥コンポジットレジン コンポジットレジンの表面には、顕著なプラークの蓄積が見られ、粘膜の炎症が増加することが示されている9。そのため、明らかにプラーク領域を増加させ、長期的な生体適合性が欠如しているため、その使用は制限される。 インプラント周囲組織は、辺縁歯肉縁から歯肉溝に存在する幅約1.4mmのプラーク領域(不潔域)とそこからインプラントプラットフォームまでの付着領域(清潔域)に分けられる(図1)。プラーク領域は細菌で汚染2)上皮付着と結合組織付着

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