QDT 2024年1月号
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 パーシャルデンチャー製作において、単一シリコーン一回法の印象採得では、咀嚼時の粘膜の被圧縮変化が印象内に取り込まれず、石膏模型上でいかに適合精度の優れたキャストパーシャルフレームを製作しても、口腔内では不適合な部分が発生し、咀嚼時にパーシャルデンチャーの床部分の沈下が鉤歯に負担をかけてしまう。その結果、鉤歯はクラスプによって常に揺さぶられ、鉤歯周辺の歯周組織 選択圧印象のためのトレーが具備すべき条件を図1に示す。また、選択圧印象採得に適切な外形を有するトレーの製作のポイントは図2のとおりである。 選択圧印象のためのトレーが具備すべき条件について以下に述べる。第1回 キャストパーシャルデンチャー製作のためのトレーに問題が発生し、最悪の場合は鉤歯が抜歯されてしまうこともある。 それらを防ぐためには、義歯床がかかわる粘膜の静的な形態を印象採得(一次印象)したのちに、二次印象として粘膜を加圧しつつ残存歯の傾斜などの位置変化を防止しながら印象採得する必要がある。レーの外形線を描き、その線に合わせてトレーを製作する(図6参照)。これにより、セミパテタイプのシリコーン印象材にて一次印象を採得するときに、義歯辺縁をオーバーボーダーに印象採得することが可能となる。67QDT Vol.49/2024 January page 0067図1 選択圧印象のためのトレーが具備すべき3条件を示す。リーフ1)印象採得時に変形しない剛性 印象撤去時などにトレーが永久変形してしまうと、印象体も当然変形してしまう。そのためトレーには適切な厚みと剛性をもたせる必要がある。筆者はトレーの材料としてしっかりとした強度をもっている常温重合レジン「オストロンⅡクリアピンク」(ジーシー)を使用し、また、製作後のレジンの収縮による経時的変化を避けるために、使用する2日前には完成させるよう心掛けている。2)適切な外形 トレーに適切な外形を付与するためには、模型上に解剖学的なランドマークから考察されたパーシャルデンチャーの最終外形線を描いた後、その2~3mm内側にト3)残存歯の無圧印象のためのスペースと適切なリリーフ 鉤歯を含めた残存歯に対する無圧印象のためのスペースはパラフィンワックス2枚とする。ただし孤立歯の場合は3枚にする。また、前歯部の唇側を3枚にしておくと、ほとんどの症例に適応可能である。選択圧印象のためのトレーが具備すべき条件①印象採得時に変形しない剛性②適切な外形③残存歯の無圧印象のためのスペースと適切なリ

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